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2016年01月29日17:42

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KSTメンバーによるモーツァルトの室内楽

今年は、モーツァルト生誕260年のモーツァルトイヤー。10年前の250年ほどの盛り上がりはないものの、そこはやっぱり人気のモーツァルトだと思います。

そのモーツァルトの誕生日が1月27日でした。例年恒例の紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)メンバーによる室内楽はオール・モーツァルト。主催の紀尾井ホールとともに日本モーツァルト協会の協力支援もあって、会場はいかにもモーツァルトが好きというファンがつめかけ熱っぽい雰囲気。

プログラムも、KSTメンバーならではの編成の幅の広さと、コアなモーツァルト・ファンにふさわしいもの。じかに生演奏には接する機会の少ない、ディヴェルティメントの2曲とカッサシオンの2曲。演奏される機会がないのは、いずれも、室内オーケストラには小さすぎて、室内楽としても取り上げにくい、という編成だからなのでしょう。

出遅れたせいもあってチケットが取りにくく、それならとゲットしたのが2階右バルコニーの一番奥の席。この位置からだと、ステージ上の演奏者はほとんど背中ばかりとなります。

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この席が実はとても音がよい。

滅多に座ったことはありませんが、その音のよさに気がついたのは、公開リハーサルを聴いたときのこと。そもそもは指揮者の話が聞こえやすいということでそこを選んだのですが、直接音がよく聞こえるので各パートの音の分離がよく、楽想が細かに聴けるのです。紀尾井ホールの音は、そのシューボックス型の響きと高い天井にありますが、それらに加えて舞台の響きがとてもよいということがあるようです。その響きがうまくのってとてもよい心地です。

録音のマイクセッティングでも、ステージ真上の高い位置にセットするのが常套ですが、ちょうどその位置に近いのが、ステージを取り囲むバルコニー席ということになります。響きの豊かな音のよいホールほど、この位置の音の良さが際立ちます。ミューザ川崎もそういうステージ上のバルコニーで聴くと素晴らしい。音色の濃さと音の分離、厚く深いサウンドが聴けて、目玉ともいうべき好パフォーマンスの席なのです。

最初のディヴェルティメントが始まった途端に、優雅で色艶の濃いサウンドが香華のように下から湧き上がってきて思わず「あ、あ…」とため息をついてしまったほど。KV205は、Vnがたった1本という珍しい編成ですが、それが華麗なストリングオーケストラを超えるような豊潤な響きがするのです。

Vnの小川とともに、全曲出ずっぱりだったのがコントラバスの池松宏。そのバスが実によく響くのです。この低域が厚く濃く、しかも、その動きの妙味がよく聞こえることも、この席の利点。実際、ミューザ川崎で聴く大オーケストラも、通常位置よりもずっと低域寄りの分厚いサウンドに聞こえるのです。紀尾井でも、この位置で聴いたKSTのマーラー4番にとても感銘を受け、しかも、これほどマーラーがバスラインに様々な意匠を凝らしていたことに気づかされて実に面白かったのです。

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けれども…

欠点もあります。紀尾井のバルコニー席は、ステージが見えにくい。乗り出さないと見えないし、バーが常に視界を遮ります。そうなると、ステージから目を離してじっと音楽だけに耳を傾けるということになりがち。人間は、不思議なもので、視覚を休めてしまうと集中力がどんどん落ちてきます。一方で、極上の響きが暖かく身を包むようにあたりの空気を満たしてくれる。あらら…、こっくり、こっくり(笑)。

ディヴェルティメントは、「霊名の祝日」といった個人の祝い事や食卓用として作曲されたものだそうです。「霊名の祝日」はいわば誕生会のようなもの。そのBGMというわけです。ザルツブルク時代の青年モーツァルトの心地よい音楽は何よりの眠りへの誘い(笑)。後半のカッサシオンは、少しだけ編成も大きく大学の修了式などの式典用に作曲されとかでもうちょっと元気がよい。それで目を醒ましていましたが、シンプルで天真爛漫な音楽の心地よさは若いモーツァルトそのもの。

アンコールでは、出演者全員が出て来て立ったままで、モーツァルトの生誕を祝うように「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。会場の聴衆もちょっと口を動かすようにしながら笑みをたたえていたというような気がしました。






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KSTアンサンブル2016
KSTメンバーによるモーツァルトの室内楽
2016年1月27日(水) 19:00

紀尾井シンフォニエッタ東京メンバー
広田智之(Ob)、森枝繭子(Ob)、大澤昌生(Fg)、アンドレア・チェーザリ(Hr/賛助出演)、和田博史(Hr)、小川有紀子(Vn)、景山裕子(Vn)、寺岡有希子(Vn)、山崎貴子(Vn)、中村智香子(Va)、阪本奈津子(Va)、池松 宏(Cb)

モーツァルト:ディヴェルティメント第7番ニ長調KV205
モーツァルト:ディヴェルティメント第11番ニ長調KV251

モーツァルト:カッサシオント長調KV63
モーツァルト:カッサシオン変ロ長調KV99

(アンコール)
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス KV618

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