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2024年12月11日10:39

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コパチンスカヤとカメラータ・ベルン(彩の国さいたま芸術劇場)

いつもいつも興奮の中心にいるコパチンスカヤ。

この日もあらゆる面でスリル満点のコンサートとなりました。

最初の曲は、コパチンスカヤの自作。音と音とが激情も露わにぶつかり合うような音楽。コパチンスカヤのヴァイオリンは、やや渋めのアルト寄りの音色で、不安や焦燥、脅威などの感情が高まり怒りに達するとガーっと激しく呻く。あっという間にコパチンスカヤの世界に引き込まれてしまいます。

パトコップというのは作曲家としての芸名(?)。たぶん、Pat(risia)Kop(atchinskaya)ということでしょう。

弓を構えたままゆっくりと身体を一回転させると、そのままアタッカで二曲目へ。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。。

あの有名なホ短調協奏曲ではなくて、メンデルスゾーンが13歳の時の作品。この時期、一連の「弦楽のための交響曲」が作曲されている。これらの弦楽オーケストラの曲は、けっこう演奏機会も多く、確かに早熟の天才ぶりには舌を巻く思いもしますが、至って古風で正直言って面白いと思ったことがありません。けれども、これもまたコパチンスカヤの魔術なのでしょう、実に面白い。まるで、カール・フィリップ・エマヌエルの曲をモダン楽器でバリバリと弾き進めていくような爽快な演奏。古風な作風だけれども、疲れを知らぬ少年の生命力にあふれた、闊達に動き回る音楽は、とても香ばしくにぎやかでモダンな味わい。ちょっぴり塩味の効いた現代風のカデンツァが格好いい。

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休憩をはさんでの後半は、メインテーマの「死と乙女」。これがほんとうに凄かった。

単なる弦楽オーケストラの各パートへの置き換えではない。実に精妙に再編され、14人編成にソロ、分奏へと割り当てられて、ロマンチシズムの音量起伏や音色、触感の色彩を拡大している。それをコパチンスカヤのリーダーシップのもとに一糸乱れぬアンサンブルを展開する。カメラータ・ベルン恐るべし。

まず驚いたのは、冒頭の二音(D)のフォルテッシモ。ターン・タタタ・タンという激しい音形。これをダウンではなく、アップボウで始めるのは初めて見た気がします。その分、耳にキツいアタックが取れて、心の奥底から湧き出る怒りのような叫びになる。管楽器で言えばタンギング無しの吹き出しということになるでしょうか。ゥーン・タタタ・タンという感じ。これでアインザッツツを正確に合わせて力強くピュアに響かせるのは並みの技術と鍛錬では実現できないと思うのです。

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こうしたアンサンブルの極みともいうべき意匠を尽くした表現が随所に現れる。コパチンスカヤのソロだけではないのです。極めつけは、超のつく最弱奏。最後の変奏曲末尾のpppとdim.が繰り返される主題音形は、そのまま生と死の境界へと沈んでいくかのよう。聞こえるか聞こえないかの長大なディミニエンドに会場は針1本落とす音も聞き逃さぬかのように静まりかえります。

そのことは、次の楽章での死神が甘く誘うささやきのようなトリオでも繰り返されます。甘い音色の中低音の持続音にはぞっと寒気がするほどです。

最終楽章の、狂ったような死のタランテラが始まって間もなく、あのアクシデントは起きました。コパチンスカヤの弦が切れたのです。間髪を入れずに次席が自分の楽器とコパチンスカヤのものとを交換。弦を換えに楽屋に下がっていく。一人欠けた13人でもの狂いの死の舞踏が続けられる。尋常ならざるプレストの終末近く、ようやく次席が戻り再び楽器が交換されるのですが、スリル満点、そして鮮やかなほどに沈着冷静、優雅なリレーでした。

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この日は、NHK中継録画が入っていたので、この終楽章を二度聴ける僥倖に恵まれました。

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パトリツィア・コパチンスカヤ
 & カメラータ・ベルン
2024年12月8日(日) 15:00
さいたま 与野本町 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
(1階 G列17番)

パトコップ(コパチンスカヤ):怒り
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 「死と乙女」D810
       (コパチンスカヤ編/弦楽オーケストラ版)

(アンコール)
バルトーク:ルーマニア民族舞曲より
シューベルト:「死と乙女」第4楽章(NHK中継録画リテイクのため)



[ヴァイオリン]パトリツィア・コパチンスカヤ
[室内オーケストラ]カメラータ・ベルン
 ディレクター/ソリスト◆Patricia Kopathcinskaja
 ヴァイオリン�帰�Hyunjong Reents-Kang Oszkar Varga Simona Bonfiglioli
 ヴァイオリン�侠�Susan Meesun HongColeman Silbylla Leuenberger 
         Christina Merblum Bollschweiler
 ヴィオラ◆Anna Puig Torne Alejandro Mettler Friedemann Jahnig
 チェロ◆Thomasu Kaufmann Gabriel Wenly
 コントラバス◆Kathi Steuri
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