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2024年05月01日23:26

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「西行」(寺澤行忠 著)読了

「願はくは花の下にて春死なむ その如月(きさらぎ)の望月の頃」


中世を生きた歌人・西行の歌は、近現代日本人の心を捉えて、どこまでも離さない。源平の乱の時代、生まれ落ちたのは公家に使える武士でありながら若くして出家し、生涯を漂泊の旅に生きた。

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仏門に入ったとはいえ決して俗世と縁を絶ち隠遁したわけではない。歌道、仏道を通じて多くの人々と交わり、尊崇を得ている。歌はむしろ平明で、歌壇主流の美辞や技巧とは縁が薄い。情緒豊かな情感は、気品に満ちた色艶があって、しかも、内省的。自然を愛し、円熟の寂寥、閑寂の境地は、日本人の美意識の原点と言ってもよいかもしれない。

「心なき身にもあはれは知られけり 鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮」


著者は、西行歌集研究の第一人者。文献・書誌に造詣が深く、写本の誤写を指摘しテキストの批判改訂に携わってきた。それだけに、私のような和歌初心者にとっても優しく寄り添うような同伴者に徹していて、西行の人生の道筋に沿いながら、その道標のような名歌184首を淡々と案内してくれる。

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だからとても読みやすい。西行の名歌に触れながら、その音韻を体感し、その境地、生き様を反芻する。読む歩調、足取りはひとそれぞれだと思う。茫漠とした読感もあってよい。けっしてせかされることはない。ゆっくりと読めばよい。

「何事のおはしますをばしらねども かたじけなさに涙こぼるゝ」


よい本だと思う。


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西行 ― 歌と旅と人生 ―
寺澤 行忠 (著)
新潮選書
2024/1/25
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