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2018年12月12日01:22

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児玉麻里&児玉桃 ピアノ・デュオ

今シーズンのフィリアホールのシリーズは、とても個性的で楽しいコンサートが続きます。

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今回は、児玉麻里&児玉桃の姉妹によるピアノ・デュオ。2台のピアノ連弾は、最近、CDなどで話題になることが多くなりましたが、コンサートのプログラムとしてはあまり聴く機会のなかったジャンルです。

児玉姉妹は、ともにパリ国立高越音楽院に学び世界的に活躍されていますが、お姉さんの麻里さんは夫君ケント・ナガノと共演した協奏曲全集などベートーヴェンがお得意、妹の桃さんはメシアンなどフランスものが得意で、それぞれ持ち味が違うのですが、しばしばデュオを組んで活動されているそうです。ラヴェック姉妹のように双子とまではいきませんが、やはり息の合った姉妹のデュオは極めてクオリティーが高く、実に楽しいコンサートでした。

プログラムは、クリスマスシーズンにふさわしいチャイコフスキーの3大バレエ。曲がとても親しみやすいものばかりだけに、お二人のピアノの素晴らしいアンサンブルや、ラフマニノフやドビュッシー、ランゲリ、アレンスキーらのピアニズムの違い、そして何より2台のピアノによるダイナミックなサウンドを堪能することができました。

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2台のフルコンサートピアノが並ぶと、さすがにホールのステージも狭く感じられるほど。奥に置かれた左鍵盤のピアノと、手前の右鍵盤のピアノが側面の曲面がぴったりかみ合うように置かれ、手前の右鍵盤のピアノの響板が外されています。

編曲はいずれも1台のピアノを二人で弾く4手連弾用のもの。それを2台のピアノで演奏するというわけです。4手連弾なので、二人の持ち場は高域側と低域側と別れています。左鍵盤が言ってみれば第1ピアノで高域担当、右鍵盤が第2ピアノで低域担当ということになります。第2ピアノは、通常と逆配置ですので低弦側がもろに客席側に向いているわけで、普段のピアノ・リサイタル以上に低弦のドスの利いた響きが楽しめるということになります。

実際に、演奏が始まると響板がひとつのせいか、2台のピアノの音はステレオ的に展開するというよりは密接なアンサンブルと濃厚な響きに聞こえ、特に低弦は逆相的にステージいっぱいに広く響きわたって聞こえるのが印象的でした。そのダイナミックスは並の室内オーケストラよりも迫力があって、ホールの壁がビンビンと反響するほど。

最初の2曲、「眠れる森の美女」と「白鳥の湖」は、姉の麻里さんが第1、妹の桃さんが第2ピアノに座ります。

ラフマニノフ編の「眠れる森の美女」は、とてもオーソドックスなピアノ編曲。在学中に従兄弟のシロティから勧められて編曲したけれど、ちょっと手抜きをして御大チャイコフスキーに怒られて叱られ、また、編曲しなおしたのだとか。ラフマニノフらしからぬ普通さは、若かりし頃の未熟さということでしょうが、そういう素朴なピアニズムにしっかりとしたパトスを感じさせるのは、さすがラフマニノフ。

「白鳥の湖」は、前半3曲はチャイコフスキーの同僚ランゲリの編曲。これらはさすがに練達のピアニズムですが、とても原曲のオーケストレーションを丹念にピアノに置き換えたもので、リハーサル用の編曲のような感じです。これが、ドビュッシーの手になる後半のエキゾチックな舞曲3曲になると雰囲気が一変します。洗練されたテンペラメントに、はっと覚醒されるような粋がはじけるようなピアノ・デュオはほんとうに魅力的。

前半、最後に演奏されたのはドビュッシー晩年の作である「白と黒で」。この曲はもともとピアノ2台のためのもの。ここで、麻里さんと桃さんがピアノを交代、桃さんが第1ピアノを担当します。この曲を、実演で聴くのはもちろん初めて。LPレコードやCDで聴くと、ドビュッシー特有の難解さが先に立ち、どちらかと言えば地味な印象を持っていましたが、こうしてお二人のはじけ飛ぶような演奏を目の当たりにすると体中の皮膚が粟立つような興奮を味わいました。とても感覚的ですが、同時に思索的で批判に満ちた音楽。それが、チャイコフスキーの編曲から色彩感覚としてつながっていることに20世紀初頭の芸術のモダニズムのただならぬ深みを感じます。

後半は、ラフマニノフの師でもあるアレンスキーの編曲。リムスキー=コルサコフに師事した人でオーケストラ楽器を熟知しているのか、実に華麗で見事なまでに2台ピアノが縦横無尽に活躍し、その多彩な輝きと華やいだ楽しさは巨大なクリスマス・ツリーのよう。ほんとうに楽しかった。

アンコールで弾かれたのは、やはり4手連弾用に作曲されたビゼーとラヴェル。

ここでお二人は初めて本来の4手連弾のまま、左手のピアノに仲良く並んで弾かれました。それまでの2台ピアノの響きと、1台ピアノのそれとの違いが初めてわかります。とても親密さが引き立つビゼーと、2手では得られない室内オーケストラ的な幅の広い音域が同時に鳴るラヴェル。それぞれの意図と巧妙さがよくわかるとても楽しい演奏でした。


お二人のツアーは、今月前半まで続き、今週も浜離宮朝日ホール、週末には八ケ岳高原音楽堂、そして最後に首都圏に戻って川口リリアホールで終わるとのこと。とても楽しくささやかながらちょっと贅沢な気分にさせられるデュオ・リサイタルです。




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児玉麻里&児玉桃
2台ピアノ デュオ・リサイタル
土曜ソワレシリーズ《女神(ミューズ)との出逢い》
2018年12月8日(土) 17:00
横浜市青葉台 フィリアホール 横浜市青葉区民文化センター
(1階6列14番)

チャイコフスキー:
バレエ組曲「眠れる森の美女」op.66より(ラフマニノフ編)
1. 序奏/リラの精
2. アダージョ/パ・ダクシオンn
3. 長靴をはいた猫
4. ワルツ

バレエ音楽「白鳥の湖」op.20より(ランゲリ/ドビュッシー編)
情景 Scene
四羽の白鳥の踊り
パ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ 
(以上ランゲリ編)
ロシアの踊りe
スペインの踊り
ナポリの踊り
(以上ドビュッシー編)

ドビュッシー:白と黒で


チャイコフスキー:
バレエ音楽「くるみ割り人形」op.71より(アレンスキー編)
1. 小序曲
2. 行進曲e
3. こんぺいとうの踊り
4. アラビアの踊り
5. 中国の踊り
6. トレパーク
7. 葦笛の踊り
8. 花のワルツ
9. パ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ)

(アンコール)
ビゼー:組曲「子供の遊び」より 「ぶらんこ」
ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」より 「パゴダの女王レドロネット」
(共に連弾)
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