EDさん宅から、車2台に分乗してスイートサウンドさん宅に移動します。
昨年同様、やさしい奥様のお出迎え。玄関を上がってスライドドアを開けるとそこには、ダイニング・キッチンと一体になった二階まで吹き抜けのリビングスペースが拡がっています。その広大なスペースの3分の1ほどの玄関正面の一角がリビングオーディオのスペースになっています。全体としては大変なエアボリュームなのですが、決して無理せずそのリビングスペースのみを音で満たすということは変わっていません。
けれども、印象は一変。大変化です。
前回の印象を包み隠さず申し上げれば、スピーカーセッティングにはあまりこだわらず音楽に優しく包まれるようにその雰囲気に浸っておられるというものでした。その分、音場や音像はぼんやりとしていて統一感とか実体が薄いというものでした。それが大変化なのです。これにはちょっとびっくりというか感激してしまいました。
その激変をもたらしのが正十二面体のスピーカーキャビネット。
部屋に入ってシステムを見るとひときわ目を引く異形の形状です。事前にEDさんから聞いてはいましたが、勝手に何となく球形スピーカーのようなものを想像していました。70年代に日本ビクターが開発した球形に多数のユニットを配置した、いわゆる呼吸球の理想を追求した全方向無指向性スピーカーを頭に浮かべていました。
でも実物を見ると、キャビネットは球形に近い正十二面体ですが、ユニットはひとつだけ。ところが、このキャビネットが素晴らしい効果を上げています。直方体のキャビネットに較べて振動や共振が抑えられ、内部反射も十分に拡散されているのでしょう。対向面は平行ですが対向面となるふたつの正五角形は180°反対向きになりますので定在波や干渉が起きにくいのではないでしょうか。
難しいのは設置の仕方です。最初は、純正のスタンドがあったそうですが、既存のマルチウェイ箱と組み合わせるためにウーファーの上に載せるようなスタンドを自作されたそうです。このスタンドが絶妙でスタンドの脚のスペースにツィターがすっぽりと入ります。しかも、3つのユニットがきちんとライン軸上に合わせてあります。以前はそうなっていなかったので音像定位が安定せず不正確でしたが、今回はぴたりと正確に音像が展開します。
音場のひずみがまったく感じられずとても自然な拡がりです。センターリスポジから正対するとちょうど玄関ホールに当たる部分に奥行きのある立体音場が広がり、しかも、前へ出て来るべき音像が前に出るのはコーン型ユニットの人徳のようなもの。
先日、KM1Vさんのところで聴かせていただいたチャールズ・ミンガスは、自然音を取り込んだユニークな音楽ですが、その空間は横の広さだけでなく高さ方向にも拡がり、ちょうど向こう壁の上方いっぱいにも拡がっています。音の響きの大きさ、形の表現が見事で、これならウィーンのムジークフェラインとベルリンのフィルハーモニーの響きの形の違いもきちんと再現するに違いありません。
リビングのテーブルで、奥様が入れていただいたコーヒーと手焼きのクッキーをごちそうになっていると、システムを遠く真横から眺めているにもかかわらず、坂本冬美が、スピーカーとスピーカーにはさまれたホールトーン豊かな空間のなかにポッとホログラフィックに直立して見えてきます。昨年、椀方さんのところで体験したユニコーンと同じです。正多面体キャビネットの効果で、回折が小さく音の回り込みがよいのでしょう。2chステレオ録音の再生としては、むしろ球形や360度型の無指向性よりも音の拡散ベクトルが自然なバランスになるのだと思います。
ユニットは、以前のものとまったく同じだそうです。二階のシステム(こちらも素晴らしい進化成熟ぶりでした)を聴いてみると新規導入のスキャンスピークのツィターの音の優位性はまごうかたなく、できればこのメインシステムとツィターを入れ換えていただければどれだけ完成度が上がることかと惜しまれるほど。
スイートサウンドさんにしてみればアライメント調整の成果や新型DACなどアピールすべきところは多々あったのかもしれませんが、私はこの正十二面体キャビネットにすっかりやられてしまいました。工房の手作りだそうですが、ていねいな作りでコストパフォーマンスは非常によいそうです。
この日の夜は、地場の新鮮な食材がいただける居酒屋さんで懇親会。
かきの天ぷらを注文するかどうかでひとしきり論議になりましたが、やっぱり頼んで良かった。美味です。
地酒もおいしかったですよ。
楽しい秋の音会、第一日目の夜はこうして更けていきました。
(続く)
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