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2017年06月27日23:01

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休日のチューリッヒと狂乱のオペラ (チューリッヒ・ミュンヘン音楽三昧 その4)

チューリッヒ・ミュンヘン音楽三昧。

チューリッヒ二日目のこの木曜日は、キリスト昇天祭の祝日。朝の市街地はひっそり。それだけにすがすがしい朝でした。

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典礼は朝の10時に始まります。キリストの典礼歴のなかで復活祭に連動するこの祝日はもっとも大きな典礼のひとつ。巨大なパイプオルガンが備えられた聖母聖堂では典礼が行われるとのことですが一般観光客の参観はできないということでちょっと残念でした。その一方で、大きな時計塔が有名な聖ペーター教会はひっそりと静かでした。

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教会内の回廊の壁には宗教改革の歴史を俯瞰するパネル展示がしてあります。スイスは、ヴィングリとジャン・カルヴァンによる宗教改革のおひざ元であっただけに中欧の中心に位置しながらも、今もプロテスタントが国民の3割を占めています。

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市内を散策していてちょうどリンデンホフの丘でリマド川沿いの街並みを見下ろしている時にちょうど10時になり、町中の教会の鐘がいっせいに鳴り出したのです。それはほんとうに感動的な瞬間でした。

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チューリッヒ湖畔に面する市街には国際会議場(トーンハレ)があります。ここがチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の本拠地。美しいホールだと聞いていますが、残念ながらあくまでも今回はオペラが主目的ということで、オーケストラを聴く機会はありません。

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休日は無料というチューリヒ美術館は、ホドラーやベックリン、ジャコメッティなどスイス出身の作品はもちろん、ゴッホ、セザンヌなど印象派やムンクなど近現代の作品が充実していてとても楽しい。

さて…

この日は、オペラのダブルヘッダー。

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休日ならではのこととはいえ、こんな芸当ができるのもコンパクトで舞台設備が充実しているチューリッヒ歌劇場ならでは。しかも、連続の2演目はいずれも「狂人」がらみ。

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マチネーは、ハイドンの『オルランド・パラディーノ(騎士オルランド)』。

ハイドンのオペラというのはほとんど聴くことはありませんが、このオペラだけは人気があって特に今世紀に入ってからは各地で上演される機会が増え、日本でも2008年に北区王子の北とぴあ国際音楽祭で上演されています。バロックオペラというのか、時代はモーツァルトと重なりますので、近代オペラの原型ともいうべき作品。ハイドンがエステルハージ宮廷のために書いた作品なので、モーツァルトの傑作群のように市民に開かれたものではありませんが、ハイドンの充実した音楽書法が随所に現れます。

内容は、実に他愛もないもの。シャルルマーニュ帝の甥でサラセンと戦った悲劇の英雄ローランを称える叙事詩「ローランの歌」を題材にしたもの。「ローラン(=オーランド)」は中世の大ベストセラーで、ここから翻案されたオペラがバロック期に盛んに上演されます。ハイドンのこの作品もそういうバロックオペラの末流で、話しそのものは英雄史からかけ離れた他愛もないもの。

中国の女王アンジェーリカへの恋と嫉妬に狂った騎士オーランドは正気を失っている。ロドモンテというオルランドの宿敵もアンジェーリカに想いを寄せ敵意をむき出しにしている。その肝心のアンジェーリカには、実はメドーロという恋人がいる。要するに順不同に繰り返される三角関係の甘い恋の場面が、しばしば狂人の乱入によってドタバタになるというだけのこと。アーノンクール盤でさんざん予習したけれど、このオーランド登場の場面になると雰囲気が一変する。それが可笑しくて仕方がない。

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歌劇場の雰囲気も、前夜の「マクベス」とは一変していかにもバロックオペラの会場らしくなってしまうのが不思議。

それは、ピットのフロアが上げられて浅くなっていることと、決して無関係ではないと思います。

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ピット内は、当劇場のオーケストラではなく、ヴィンタートゥール・ムジークコレギウムという室内オーケストラ。本拠地のヴィンタートゥールはチューリッヒから北東25Kmにある古い町。陶製ストーブから繊維工業、機械工業へとスイスの産業革命を牽引してきた工業都市ですが、蓄積した豊かな資産を活かして美術・芸術品の数々を蒐集してきた芸術の町でもあるのです。

ピリオド奏法のキレのよいサウンドと、ハイドンの色彩と表情に富んだ音楽がとても心地よい。特段ストーリーというほどのストーリーのないオペラですので、そういう聴き方をすると起承転結に乏しい気がしがちですが、いかにもエステルハージ時代のハイドンの交響曲が持つ機知と感情の起伏に富んだ音楽。この公演の最大の立役者はこのオーケストラだったような気がします。

一方で、アメリカの西部劇風の酒場という舞台はあまりいただけない。前半と後半とで左右が入れ替わり、大団円でまた左右が入れ替わるというイタズラはあるのですが、どうということもない。あまりに日常的な設定は、モーツァルトのオペラの演出でもありがちですが、音楽をあまりにも矮小化してしまい起伏のようなものが削がれてしまいます。

耳だけで聴いていたアーノンクールの演奏のように、騎士オルランドが出現するとあたりが恐怖で凍りつき、それに続いて右往左往するドタバタのあげくにずっこけるという抱腹絶倒の可笑しさもまったく無くなってしまいました。どうせ現代風にアレンジするなら、もっと破天荒なデフォルメがあってしかるべき。そうでないならごくごく宮廷オペラ的なアンティークな時代錯誤のほうがかえって音楽が生きてくると思います。

歌手陣も、アンジェリカ役のジェーン・アーチボールドを始めとしてハイドンを得意とする錚々たる顔ぶれなのですが、今ひとつ個性に乏しく歌唱は立派だしみんな芸達者なのですが何も出来事が起こらない。例えばオルランドの従者パスクワーレ役のフアン・サンチョは、こういうイタリアやスペインのバロック音楽のベテランらしく実に芸達者で早口言葉のような口上など実に愉快。そういう部分部分を存分に楽しむオペラであって、あまり余計な翻案演出でこういう茶目っ気をスポイルしてほしくない。

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とはいえ、昼下がり時の鑑賞にもかかわらず一睡もすることなく楽しいオペラ鑑賞でした。

そして、夜の部は、いよいよプロコフィエフの狂気の世界です。

(続く)




チューリッヒ歌劇場
ハイドン:「騎士オーランド」
2017年5月25日(木) 14:00
スイス・チューリッヒ チューリッヒ歌劇場



Orlando paladino
Opera by Joseph Haydn

Conductor
Riccardo Minasi
Producer:Jetske Mijnssen
Stage design:Ben Baur
Costumes:Joki Tewes, Jana Findeklee
Light-Design:Hans-Rudolf Kunz
Dramaturgy:Fabio Dietsche
Orchestra:Musikkollegium Winterthur


Angelica:Jane Archibald
Rodomonte:Ruben Drole
Orlando:Michael Spyres
Medoro:Mauro Peter
Licone:Martin Zysset
Eurilla:Melissa Petit
Pasquale:Juan Sancho
Alcina:Anna Goryachova
Charon:Ildo Song

Angelica (Schauspiel):Meret Bodamer
Orlando (Schauspiel):Felix Gaiser

Statistenverein am Opernhaus Zurich

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