台湾にプライベートで旅行するのは初めて。仕事を離れてまったくフリーで旅行してみると、やっぱり目に入る風景や耳に入る風のささやきはちょっと違ったものになるようです。そんな旅行の印象をつづっていこうと思います。
台北の街も大きく変貌しつつあります。
その新しい風が吹いてくるのは台北の中心から南東にあたる信義地区。いわば台北の新副都心とも言うべき地域です。かつては何もない農村地帯でしたが、近年、インフラ整備が集中して進み現代的な都市景観へと一変しました。
そのシンボルが世界貿易センター(台北世界貿易中心)であり、ランドマークの台北101です。そこに隣接したデパートの新光三越をハブとして華やかなショッピングモールが空中の歩道橋でつながれて立体的に展開しています。
新光三越は、1991年に現地の新光グループと三越グループ(当時)の共同出資で台北に1号店を開店。以降、国元の三越の衰退を尻目に目覚ましい発展を遂げています。その都会的イメージと若々しいファッションは若い世代を中心に幅広い顧客層をとらえて、まさに信義地区の新都心としてのイメージを代表しています。海外進出の成功とも言えますが、すでにそのイメージも客層も台湾独自の展開になっていて、三越の成功というよりは「新光」の成功というべきでしょう。主導権はほとんど現地側にあるそうです。
そういう若い世代を惹きつけているのが日本食という新しい食のトレンドです。
台湾で大きな成功を得ているのが、台北に住む人ならいまや誰でも知っているという焼き肉店の「乾杯(カンパイ)」です。台湾人の母親を持つ日本人留学生が高校時代のアルバイト経験を買われて店を手伝ったことからスタート。店を継承する形で独立し創業しました。8時になるとビールで乾杯、一気に飲み干したひとにはさらにもう一杯サービスするというイベントが大受けして、たちまち大人気となりました。元気で明るいサービスや種々のイベントが、健康で家族的な雰囲気で台湾の新世代の心をがっちりつかんでしまったのです。
店内は早い時間にもかかわらず、家族連れでいっぱい。退勤時間になったらさっと仕事を切り上げて家族と誘い合わせてこうした飲食店で夕食をとるというのが台湾人のワーク・ライフ・バランス。日本の「働き方改革」なぞどこ吹く風。そんなものは始めから必要ないのです。
日本のホルモン、「焼肉居酒屋文化」を伝えるという使命感は、さらに焼肉店以外の日本食へと拡大しています。同じ信義地区のハイライズビルの一角には鉄板焼きや串焼きレストランを展開。ちょっと高級感のあるスタイリッシュな日本食レストランは、若いカップルや女性が多い。
もとをただせば半島由来ですが、『焼肉』というのはもはやら日本食。網焼きでカルビなど霜降り肉を中心に自分であぶって食べるというスタイルは韓国バーベキューとは別物。最初は用意した韓国式サイドメニューもいまはほぼ皆無。キムチだけは残しているそうですが、それも注文は少ないとのこと。
意外なのですが、台湾人はあまりお酒は飲まないそうです。各店の売り上げ高に占めるアルコール類の比率は日本よりはるかに低い。けれども、その分、お客さんの回転が速く、料理の単価がかなり高く取れるので収益性は日本よりもずっと高いそうです。
バックには日本の商社の巧みなサプライチェーン戦略があります。
店で供されるのはオーストラリア産の特上和牛。台湾では狂牛病のために日本からの輸入は禁止になっているからです。一方、日本ではオーストラリア牛肉は、値段が安い赤身肉として人気があるが霜降り肉としてはブランド力は皆無に等しい。そこで特上部分は台湾のこうした和食店に卸し、残りの部分を日本へと振り分けている。台湾の日本食店は特上牛を確保し、残りが日本に持ち込まれて効率よくオー・ジー・ビーフが消費されるというわけ。どちらもウィン・ウィンの関係になっているそうです。
この数年の話題は、日本のラーメン文化の進出。
博多ラーメンの一風堂と共同出資で台北に出店したところ大成功。海外進出をもくろんでいた一風堂が、カンパイの心意気とその成功に感服して一気に提携話しが進みました。それでも、とても淡泊な味覚の台湾人があんな塩辛いスープのラーメンなんか食べるものかと言われたのですが、またたく間に成功します。これが日本で話題になって、我も我もとラーメン屋が進出したそうですが、ほとんどはうまくいっていません。そこにはやはりカンパイの経験とノウハウが隠されているのでしょう。
もちろん私たちはわざわざ台湾に来て日本食を食べたわけではありません。
同じ信義地区のハイライズの最上階の会員制の中華レストランで、美味しい北京ダックをいただきました。
台北は、中華料理三大都市ともいわれます。中華料理の粋を組み合わせたメニューは絶品で、日本人の口にはぴたりとはまってたまりません。
水晶蝦とエンドウ豆は、杭州西湖の名物料理で亡母の得意料理のひとつでした。
この日はあいにくの雨。でも台北市民にとっては水不足を解消した久々の恵みの大雨だったそうです。その雨模様の美しい夜景を眺めながら、最上の中華料理を楽しみました。
(続く)
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