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2016年06月08日15:05

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水戸室内管弦楽団定期演奏会 ユーリ・バシュメット

薄曇りでも梅雨前の爽やかな微風が燻る常磐道を駆け抜け水戸へ。

久々の水戸室内管。今日は、傑出したヴィオラ奏者であり指揮者としても活発な活動を展開しているユーリ・バシュメットの初登場。私はバシュメットのヴィオラを実際に聴いたことがなかったので何よりその独奏を楽しみにしていました。けれどもそれはむしろ指揮者としての存在感をまざまざと知らされることになったのです。

まず何よりも、この日の水戸室内管の弦アンサンブルの響きに目を瞠る思いがしました。それは第1曲目のハイドンのアレグロ。ト短調のシンプルな和声の上昇進行がとても心地よく低弦の八分音符の刻みが情感的で、しかも、アンサンブルとしての音程がぴたりと合っている。古典音律の美と調和というのか、そういう自然な整数倍音の音階が冴え渡っている。名人揃いの水戸室内管ですが、今日はさらに違う。こんな響きは東京でも滅多に聴けません。いや、ヨーロッパだってそんなには聴けるもんじゃない。参ったなあ…というのが最初の感想でした。

二曲目は、パガニーニの四重奏曲をヴィオラと弦楽オーケストラとの協奏曲風に仕立て直したもの。バシュメットのヴィオラは思ったよりも軽くてヴィルティオーソ風の各種の技巧も何事もないように滑らかに弾いています。弓がふわっと浮いているような浮遊感があって音色はビロードのようにすべすべしていて、高音ではよく歌い、中低域では深々と響きます。

水戸室内管は、曲毎にコンマスを交替し他の弦メンバーも配置を替えていきます。

この日は、最初のハイドンを渡辺實和子、二曲目のパガニーニでは小栗まち絵がコンミスを務めます。小栗は主に関西で活躍されていて私には馴染みが薄く、たぶん、水戸でコンミス席に座るのを見るのは初めて。教育者としても実績のあるひとで、門下生には神尾真由子、長原幸太、木嶋真優…と錚々たる名前が並びます。

そういう教育者という側面なのでしょうか、このパガニーニを実に楽しそうにリードしていきます。あらゆるところでこの日のアンサンブルの絶妙さを見せつけてくれましたし、バシュメットのソロだけではなく弦楽オーケストラにも様々な奏法上のスパイスがあるようでそうした技巧をいかにも楽しんでいる風なのです。そこに教育者としての奏法指導があったのではないかと勝手に想像してしまいました。一見渋い古風な曲想でありながら微妙なテクスチュアの変化を楽しみました。

後半の1曲目は「コル・ニドライ」。チェロ独奏とはずいぶんと違った美しい叙情に満ちた聖歌。地中海東岸のオリエントな調べがエキゾチックでありながら少し懐かしいような夕暮れの情景を思わせる静謐な祈り。

コンマスは豊島泰嗣。前半のコンミスのお二人、渡辺も小栗も米国留学を経て仲間と弦楽四重奏団を結成したり室内オーケストラでキャリアを磨いてきたひと。水戸の常連ではオルフェウス室内管で活躍した田中直子も同じ。水戸室内管の女性コンミスたちのリーダーシップには、そういう小アンサンブルで磨いた感性があって、個々のメンバーが対等に絡み合う。個人的にはそういうときの響きのほうが好きです。対して豊島はやっぱり大オーケストラのリーダー。オレについて来いというリーダーシップが強く出過ぎがち。

だから後半は、相変わらずの響きのよさがありながら、少し一本調子でした。特にシューベルト…。シューベルトには古典的で天国的な明るさと、哀感や不遇を慨嘆する陰鬱さが同居していてその間を徘徊するような刹那が儚く美しい。そういう塩水と淡水との汽水領域の豊かさのようなものがこのシューベルトには徹底的に欠けているのです。まるでベートーヴェンとハイドンの単なる追随者のようなシューベルト。

そういうことが気になって集中力が低下すると、管楽器群の微妙なバランスの悪さが気になってきます。工藤重典のフルートが往年の光沢の滑らかさに欠け少し音が立ちすぎてオーボエや弦との溶け込みに不足することがあります。それよりももっと不満だったのはファゴット。音は出ているのでしょうが、響きの支えにも色彩の調合にもならず、出るべきところでも一度も前に出てくることはありませんでした。これだけハイレベルのアンサンブルのなかで唯一残念なところでした。

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閉演後は、マイミクのロベルトさんご夫妻、GRFさんともども、エビネンコさんのご案内で大洗へ。エビネンコさんが3ヶ月前に予約したお店で新鮮な地魚に舌鼓を打ちながら、感想戦。その熱い音楽談義は、とどまるところを知らず新国立でのフォークトから始まりバイロイト、ウィーン、ルツェルン、デュッセルドルフ…と、ヨーロッパ中を駆け巡り話しが尽きません。素晴らしい一日でした。エビネンコさんありがとうございました。




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水戸室内管弦楽団  第96回定期演奏会
指揮・ヴィオラ独奏:ユーリ・バシュメット
2016年6月5日(日) 14:00
水戸市 水戸芸術館コンサートホールATM

ユーリ・バシュメット(指揮、ヴィオラ独奏)
道室内管弦楽団

ハイドン:交響曲 第83 ト短調 Hob.I-83 〈めんどり〉
パガニーニ:ヴィオラと弦楽のための協奏曲 イ短調
  (原曲:ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・ギターのための四重奏曲 第15番)

ブルッフ:コル・ニドライ (ヴィオラと弦楽のための)
シューベルト:交響曲 第5番 変ロ長調 D485
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