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2016年02月15日23:01

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紀尾井シンフォニエッタ東京 ホルン王が奏でる、 ウィーンゆかりの作曲家たち

なんとも豪華な顔ぶれでした。

長年ベルリン・フィルのソロ・ホルン奏者として君臨する“ホルン王” シュテファン・ドールさんをソリストに迎え、指揮はウィーン・フィルのコンサート・マスターのライナー・ホーネックさん。今回のコンサートマスターは、パリ管の副コンサートマスター千々岩英一さんです。
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最初のモーツァルトのディヴェルティメントでは、そのホーネックさんがコンマス席に座り、千々岩さんは次席という布陣で、指揮者なし。K.136は、ディヴェルティメントのなかでも特に好きな曲ですが、演奏が滑り出した途端に陶然としてしまいました。なんと優しく柔らかく、雅やかで、しかも、とても軽妙で心が沸き立ちます。名人揃いのKSTでさえもこんなに変わるのだろうかと驚いたほど。何とも幸せで胸がいっぱいになります。
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二曲目は、ドールさんが登場。なかなかホルン協奏曲というのは生の演奏に接することはなく、後半のモーツァルトともども、これほどの名曲にして初めてのナマ体験。先日、同じ紀尾井で日橋辰朗さん(読響首席)のソロリサイタルを聴いたばかりということもあって、耳がなじんでいたのは幸いでした。日橋さんには申し訳ないですが、あの彼でさえまだまだ若い。ドールさんの演奏を聴くと、技術的にはかなりのものがあっても格の違いのようなものを感じます。いつぞやN響定期でバボラークさんのグリエールの協奏曲を聴いたことがありますが、超絶技巧・完全無欠のバボラークさんよりもドールさんのほうが音色が多彩で逆相成分たっぷりの豊かな響きがします。聴いていると、もう50年近く昔に初めてオーボエのハインツ・ホリガーさんを聴いた時の感動がよみがえり、ついそれと重ね合わせてしまいました。あれもN響定期で同じR.シュトラウスの協奏曲だったのです。
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ここでは、一番フルートに何気なく高木綾子さんが座っているのにはびっくりでした。実は、この日、フルートの出番はこの一曲だけ。何ともぜいたくなメンバー構成です。

休憩をはさんで、もうひとつのホルン協奏曲。いわばR.シュトラウスの曲の元祖ともいうべきモーツァルト。これもそのなかでも一番好きなK.447。こんな名曲ですが、子供の時からこの歳になるまで、デニス・ブレインとカラヤン/フィルハーモニー管の古いモノラルLP以外聴いたことがないと言っても過言ではありません。最近、タックウェルとマリナー/ASMFも聴く機会を得てこれも悪くはないと思いましたが、これも古い録音です。それほどにデニス・ブレインの軽妙で貴公子然とした演奏が身に染みついているのです。ドールさんは適度な野性味のような香りがしてアルプスの高峰を連想させるのはやはりイギリスとドイツの違いでしょうか。第一楽章のカデンツァでちょっとだけ音が上がり損ねて完全無欠というわけにはいきませんでしたが、本当に自在で伸び伸びとしたその音楽を身を任せていると、騎乗して野を駆ける気分でした。

アンコールのメシアンが凄かった。

いったいどうやってこんな音を出しているのかという驚きの連続。それでも、先日の日橋さんの演奏が耳に残っていたので、若い彼の技術や技巧の高さがこれまでの日本人演奏家から大きく飛躍し、こうして世界トップランナーに手が届くところまで来ているのだということを逆に実感したように気にもなりました。

そして最後のR.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」。

驚いたことにこれも指揮者なし。ぐるりと扇形に配置して中央の指揮者の譜面台は取り払われました。
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最初と最後はともに弦楽アンサンブルのみで指揮者なしということになっていたのです。けれども、モーツァルトと23台の弦楽器がすべて独立しているこのR.シュトラウスとはアンサンブルの難易度がけた違いです。コンマス席のホーネックさんは全曲を通じてまったく指揮のそぶりがありません。曲の開始は、チェロ5台と1台のコントラバスだけで始まりますが、最初に視線を送って「どうぞ」と軽くうなずくだけでした。

その演奏は、もう何年もこの名人オーケストラを聴いてきましたが、そのなかでも最高のもののひとつではなかったでしょうか。おそらく団員たちも会心の演奏だったに違いありません。

二階席正面からステージ全体を仔細に見渡せたということもありますが、この複雑なアンサンブルを今まで以上に分析的に聴いていたということもありますが、緻密で凝縮的な機械時計のような素晴らしい演奏だったのです。ナチスドイツ降伏直前に書かれた挽歌ともいうべき曲ですが、ベートーヴェンの「英雄」の葬送の断片が、正負を織りなし、息苦しいほどに密集し、蠢き、悔恨の叫びをあげ、最後には崩壊解体し消滅すると、静かに達観したように終止に向かう。ドイツ伝統文化そのものの崩壊へのドラマとその哀悼でありながら、最後には諦観したような平安が訪れるというところがホーネック流なのでしょうか。

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そういう感動を胸の内に手早く収めると…

脱兎のごとく駆け出しました。目指すは横浜の青葉台。この日は何ともぜいたくで充実した一日だったのですが、この時点でそのまだ半分でしかなかったのです。

(続く)




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紀尾井シンフォニエッタ東京 第103回定期演奏会
2016年2月13日(土) 14:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール

ライナー・ホーネック(指揮)
シュテファン・ドール(ホルン)
紀尾井シンフォニエッタ東京(Orch)

モーツァルト:ディヴェルティメントニ長調 KV136
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第2番変ホ長調 TrV283

モーツァルト:ホルン協奏曲第3番変ホ長調 KV447

(アンコール:ホルン独奏)
メシアン:「峡谷から星たちへ・・・」より第2部 第6楽章「恒星の呼び声」

R.シュトラウス:メタモルフォーゼン TrV290

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