いまから35年前の1989年、
私は広告プランナーとしてマンションの販売広告に携わっていた。
正直なところクリエイティビティに欠ける仕事で、
あまり好きではなかった。
その年の初頭、千葉県の酒々井に計画されたマンションの
下見に行くことになり、現地で顔なじみのデベロッパーの
担当者に会って、物件内容を取材した。
そのときに「物件の価格設定がどれくらいかわかる?」と
質問された私は、経験から「4千万円を超えるくらいですか」と
答えたところ、にやっと笑って「1億円超えるかもね」。
続けて、「投資物件になっているんだよ」と
高額の理由を説明してくれた。
私はマンションは、人が住んでなんぼのものであり、
それが投資物件なることに前々から強い抵抗感を抱いていた。
相場の倍以上と聞いて、
私は不動産国国に嫌気のさしていたこともあり、
この物件の広告制作は引受けるが、
それ以後はいっさいマンション広告から手をひくことを決めた。
そして、その年の暮れ、バブルが崩壊して、
日本は失われた10年さらに20年、30年と…今に至っている。
五輪の選手村として建設され、
その後マンションとして売り出された晴海フラッグは、
販売戸数2690の内、943戸が投資対象として
企業に販売され、誰も住んでいないそうだ。
東京都の公有地を有利な価格で買い取ったデベロッパーが、
儲けを狙って、企業などに投資物件として販売したのだろう。
こうした投資によって、
物件価格は1億円超えが当たり前になり、
普通の生活者にとっては遠い存在になっていく。
人が住んでなんぼの住まい、
そうした住まいが集まってできるのがコミュニティだ。
三分の一近くが空き家のままでは、
地域社会として機能しなくなる恐れがある。
私には35年前のバブルと重なって見えてならない。
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