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2019年08月13日00:58

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高原の音楽堂とショパン (小林侑奈 「ショパン名曲の調べ」)

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八ヶ岳高原音楽堂は、八ヶ岳の東側、標高約1500mの裾野に拡がる高原の高級リゾートにある250席の美しい木造りのコンサートホール。ここはJR野辺山駅から車で20分ほどの森林のなかにロッジ、旧徳川義親公爵の邸宅を移築したヒュッテなどを中心に別荘地が拡がっています。

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設計は、吉村順三氏で、変則的な六角形デザインを基本に、緑の大自然にぐるりと囲まれた円環空間にステージと客席が配置された、木質の意匠と柔らかくナチュラルな響きがとても印象的なホールです。

コンサートに先行して、演奏者の小林さん自身による『ピアノを知ろう!音の色を感じよう!』というワークショップが開催され、私もここから参加しました。夏休み中のリゾート地ということもあって家族連れで子供たちも多く参加されていて、小林さんの話しとピアノ演奏に熱心に聞き入っています。

ペダルの様々な効果とか、小さな素のメカ部だけのオルゴールを使って、フロアやピアノ筐体、反射板の機能などの説明は決して子供向けの話しではありません。演奏も、ドビュッシーの前奏曲から夏らしいテーマの曲を選んでを例にとってピアノが紡ぎ出す音色の妙とその自然描写とか、様々な作曲家の「ノクターン」の系譜をたどったりといったお話しに、まさに老若男女が熱心に耳を傾けています。

ドビュッシー:前奏曲集より「帆(ヴェール)」
             「水の精(オンディーヌ)」
             「花火」
ベリオ:「水のピアノ」

ショパン:ノクターン 第2番
リスト:コンソレーション 第3番
レスピーギ:ノットゥルノ
プーランク:「エディット・ピアフを讃えて」
モーツァルト(ファジル・サイ編):「トルコ行進曲」


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このホールの残響の長さ(1.6秒)は、今回、トークのPAの音やピアノの生演奏ではかなり過剰で特に耳障りと感じました。ところが、いざ、コンサートで客席がびっしりと満席になると、その過剰感はほとんど無くなりすーっと音が落ち着きました。ピアノは、スタインウェイのC-227。満席のコンサート本番では、響きがぐっと引き締まりました。「1.6秒」というスペックはおそらく満席時の値なのでしょう。空席ではかなり過剰ということだったわけです。木質の響きが客席を取り囲むように回るので、やはり直接音と間接音のバランスはホール中ほどか、それよりやや後ろの方がよさそうです。

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ピアニストの小林侑奈さんは、山梨出身で桐朋学園大卒業後、イタリアに留学、2013年、ルチアーノ・ルチアーニ国際音楽コンクールにて最高位を受賞した俊英。イタリアに留学したピアニストというのは珍しい。選曲のセンスの良さも、その旋律の歌わせ方や、そのみずみずしいリリシズムは、たぶん、イタリア仕込みなんだろうと思います。一方で、ドビュッシーの「花火」のアヴァンギャルドな色彩感覚や、ファジル・サイ版「トルコ行進曲」のキレた拍節感覚など、そういう技巧もやっぱりイタリアなんだと思います。

何よりもとてもチャーミングで八ヶ岳ふもとのひまわり畑のように明るい。お話しが上手で、ショパンの一曲一曲に、その曲にまつわるショパンのエピソードや評伝の一節を紹介し、ご自身の思いも語ってくれます。おかげで、その曲の情感にしっとりと自分の気持ちを寄り添わせ、そのメロディや音色に心地よくひたることができました。

夏の高原の午後の素敵なひととき。気がついたら、外の陽の光はほんのりとオレンジ色に染まりつつありました。









小林侑奈
夏休みこもれびコンサート 「ショパン名曲の調べ」

2019年8月11日(日) 16:00
長野県 八ヶ岳高原海ノ口自然郷 八ヶ岳高原音楽堂

〜オール・ショパン・プログラム〜
ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9−2
ポロネーズ 第11番 ト短調(遺作)
子守歌 変ニ長調 作品57
エチュード 変イ長調 作品25−1「エオリアンハープ」
ワルツ 第6番 変ニ長調 作品64−1「子犬のワルツ」
ノクターン 第20番 遺作 嬰ハ短調
エチュード 変ホ長調 作品10−3
ポロネーズ 第7番 変イ長調 作品61「幻想」

アンコール
ノクターン 第2番(小林侑奈編)
モーツァルト「トルコ行進曲」(ファジル・サイ編)
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