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2018年07月26日01:32

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エレクトリック・ジーニアス (ドイツ音楽三昧 その12)

私たちのドイツ音楽三昧の旅は、再びベルリンに戻ります。

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2時間足らずの移動ですので昼前には到着しました。時間はたっぷりありますが、日曜日のこの日は例によって午後と夜のダブルヘッダー。コンサート前の市内散策は、限られた時間のなかで西地区の中心であるツォー(動物園)近くのヴィルヘルム皇帝記念教会を訪ねてみました。

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この教会は、初代ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世を記念して1895年に建設されたもの。1943年の空襲で破壊。焼け残った西側の塔がそのままに残されて戦争の悲惨さを伝える記念碑となっています。その入口のホールには壮麗なモザイク天井画があります。

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その廃塔に隣接してガラスブロックの礼拝堂(写真手前)が1961年に新設されました。中に入ってみると壁面全面がブルーのステンドグラスのようで独特の素晴らしい神聖な雰囲気を醸しています。ここはしばしば宗教音楽を中心としたコンサートが開かれているとのこと。

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残念ながらスケジュールが合わずに音楽を聴く機会はありませんでしたが、堂内に立って耳を澄ましてみるとなるほどとても音楽的な響きがします。またベルリンを訪れる機会があれば是非ここでのコンサートを聴いてみたいと思いました。



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さて、この日、私たちが目指したのはベルリンのコンツェルトハウス。

ここを本拠地とするベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のコンサート。2006年に改称する以前はベルリン交響楽団と称していました。ベルリンのオーケストラは、東西分裂と統一もあってわかりにくいので経緯は省略しますが、東ベルリンを代表するコンサート・オーケストラとして、シャルプラッテンにクルト・ザンデルリング指揮の録音が数多く残されている名門オーケストラ。

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かつてはシャウシュピールハウスと呼ばれていましたが、どちらにせよウィーンと紛らわしいことは変わりません。経緯はこれまた省略しますが、あのベルリン崩壊のクリスマスにバーンスタインが東西の音楽家を集めてベートーヴェンの第九を“フロイデ(喜び)”という歌詞を“フライハイト(自由)”に替えて歌い上げた、その会場と言えば一番わかりやすいでしょうか。ホール内に入るとその素晴らしい内装と響きに魅了され、正面には立派なパイプオルガンもあって、わくわくするような期待感で開演を待ちきれない気分です。

ところが…

よく見ると、そのパイプオルガンにはあちこちに大きなスピーカーが据えられていて、青いカクテルライトにライトアップされていかにもケバケバしい。何かこのクラシックコンサートの前後にポップ/ロックのコンサートがあって、そのセットアップがそのままになっているのでしょうか、いかにも興ざめだと思ったのですが…。

コンサートのプログラム二曲目が始まって、仰天。

それはオルガンに編曲されたラフマニノフのパガニーニ狂詩曲だったのですが、そのオルガンはホール据え付けのオルガンではなく、そこかしこに仕掛けられたスピーカーが盛大な音響で鳴り出すいわゆる電子オルガンだったのです。

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オルガニストは、若いパンク風の青年で、後で知ったのですが、いま世界で一番お騒がせなオルガニストと言われるキャメロン・カーペンター。

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最初こそ期待を裏切られた思いで苦々しく聴いていたのですが、次第に圧倒されて終には大興奮。大変な才能を目の当たりにしたと大感激してしまいました。あのラフマニノフの超絶技巧のピアノ曲を、ステージに据え置かれた巨大なコンソールの5段鍵盤とペダルで目もくらむような技巧で弾いていく。もちろん会場は、室温が数度上昇したかと思うほどの熱気で盛り上がります。演奏後には、そのコンソールに黒山の人だかりで、ため息とも歓声ともいえぬざわめきでしばらく騒然としていました。

このデジタル・オルガンは、米国マサチューセッツのMarshall & Ogletree社製のもので、カーペンターはこれを「ツアリング・オルガン(“Touring Organ”)」と呼んで、欧米各地で演奏を行っているとか。

パイプオルガンというものは、教会やホール据え付けで建物の一部で持ち運びは絶対に不可能です。オルガニストは、教会やホール専属にならざるを得ず、ツアーをするにしても各地の楽器を弾き分けるほかはありません。そういうオルガニストの制約をどうしても打破したかったとのこと。

http://www.cameroncarpenter.com/touring-organ/

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もちろん、その超絶技巧をフルに発揮し思うような演奏効果を実現するためには反応の早いデジタル音とコンソールが必要だったということだったのでしょう。あちこちにしつらえたスピーカーからは空間を跳梁するような音の飛躍が効果的でめくるめくような音楽に終始圧倒されました。遠目には小さく見えるスピーカーですが圧倒的な低域がホールいっぱいに鳴り響きます。それがオーケストラと対等に渡り合い、音楽的にも実によく練られた演奏になっています。

このパガニーニ狂詩曲は、ボストンのタングルウッドでお披露目し、上海に渡り、さらにバーデンバーデンなど各地で公演して大評判のようです。その音楽的な分析や狙いはご本人の動画に詳しいのでそちらをご参照いただければと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=F79BgeqyXhI

この演奏が突出して異色で強烈な印象でしたが、もちろんこのホールとオーケストラにも感嘆しました。こんな素晴らしいホールアコースティックとオーケストラが聴けるなんて。後先のようになってしまいましたが、そのことは続編で。

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(続く)
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