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2017年12月30日17:17

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マイベストコンサート 2017

今年のコンサート歴を振り返ってみると、24回とほぼ1週おきのペース。これに海外遠征での6回を加えると合計30回ですので、今年もまずまずのペースでした。これをジャンル別にみると、やはり管弦楽が12回と最も多く、歌劇が7回、室内楽5回、ピアノリサイタル6回ということでまんべんなく聴いているということになります。管弦楽が多いのは自分では意外でしたが、それは紀尾井ホール室内管弦楽団の定期会員であることに加え、今年は読売日本交響楽団の土曜マチネーの半年シーズン券を買い求め夫婦で出かけたという事情があったことによるもので、必ずしも積極的に出かけていったわけではなかったからです。



(海外)
【チューリッヒ歌劇場】
 ヴェルディ「マクベス」
 ハイドン「騎士オルランド」
 プロコフィエフ「炎の天使」

【バイエルン歌劇場】
 ヴェルディ「ナブッコ」
 ワーグナー「タンホイザー」

【バイエルン放送交響楽団】
 ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」(ブッフビンダー)ほか


(国内)
【ジャンル】
管弦楽11回
室内楽 5回
ピアノ 6回
歌劇  2回



このなかで、ベストというのか印象に残ったコンサートを選ぶとなると、圧倒的に海外での公演ということになってしまいます。

中でもバイエルン州立歌劇場の新プロダクション「タンホイザー」を現地で観たことは今年というより生涯のよき思い出となるものでした。ペトレンコの素晴らしい指揮振りにも圧倒されました。また、同じミュンヘンでは、憧れだった王宮内のヘラクレスザールでバイエルン放送響を聴けたというのも生涯にひとつとひとつと数えるべき体験でした。チューリッヒ歌劇場の体験も忘れがたいもの。特にノセダ指揮によるプロコフィエフ「炎の天使」は斬新さといいテンションの高さといい得がたい体験でした。

ということで、ここでは国内での公演に限って、今年特に印象に残ったコンサートを5つ取り上げたいと思います。順番はランクということではなく、あくまでも日付順に過ぎません。


1.ネマニャ・ラドゥロヴィチのブルッフ
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ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調作品26
シモーネ・ヤング指揮 読売日本交響楽団
 2017年6月17日 池袋・東京芸術劇場

ラドゥロヴィチはまったく知りませんでした。ステージに現れたその異形の姿にちょっと引いてしまったほど。しかし、その技巧、情感と喜悦に満ちた音楽性にたちまちに魅了されました。指揮者もシモーネ・ヤングと大物に恵まれたせいか読響も希に見る名演となり、終演後のステージは音楽の充実感と喜びにあふれかえるような雰囲気に満ちて、さながらラデゥロヴィチがもたらした奇跡のようでした。


2。田部京子のシューベルト
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田部京子 ピアノ・リサイタル
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第19番・第20番、即興曲ほか
2017年7月14日・11月19日 東京・新橋 浜離宮朝日ホール

田部京子の「シューベルト・プラス」第2回と第3回。シューベルト晩年の4つのソナタをひとつずつ中心に据えて、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどと組み合わせるリサイタルシリーズ。田部のシューベルトは、ことさらに深刻ぶったものがありません。「真実は細部に宿る」といいますが、誰かが「幸福も細部に宿る」と言い換えて、幸福とはそういうものだとうまいことを言っています。田部のシューベルトには家庭的な響きがあって、刹那、刹那の幸福感をちりばめてくれる。基調には何とも哀切極まりない哀感があるからこそ、そういう刹那の幸福の輝きが美しい。田部のシューベルトの凄さは、そういう万人の日常の細かな些事に対してとてもやさしい情緒的な甘美さを与えてくれるところにもあると思うのです。来年6月の第4回も楽しみです。


3.ファビオ・ルイージのシュトラウス
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読響サマーフェスティバル2017《ルイージ特別演奏会》
R.シュトラウス:交響詩〈英雄の生涯〉交響詩〈ドン・ファン〉ほか
ファビオ・ルイージ指揮 読売日本交響楽団
2017年8月24日(木) 東京・池袋 東京芸術劇場

一曲目の「ドン・ファン」でのっけから大変な快演。しかし、やはり凄かったのは「英雄の生涯」。これまで聴いたナマ「英雄の生涯」で最高の演奏でした。読響の鳴ること、鳴ること。「英雄の敵たち」の嘲笑では木管群の技巧が炸裂するし、コンマスの長原幸太のヴァイオリンソロの性格俳優ぶりは見事だし、ホルンも絶好調で余裕の安定ぶり。こんな夏の特別公演にもかかわらず1999席はほぼ満席。終末の長い沈黙の静けさから湧き上がった拍手は次第に盛り上がって騒然となってルイージへの称賛の嵐。日本の聴衆のこれほどの熱狂ぶりはなかなか見られないと思ったほどです。


4.メジューエワのショパン
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イリーナ・メジューエワ
日本デビュー20周年記念 ――ショパンの二つのソナタ
ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 第3番ほか
2017年11月18日 上野  東京文化会館小ホール

メジューエワのリサイタルは、彼女の日本デビュー20周年を記念する3回シリーズのひとつ。メジューエワのショパンに対する愛着の深さははかりしれないものがあるようで、透き通るような白い肌で清楚な白百合のような美しさをいまだに保つ彼女の全人格そのもののような、気持ちがぴったりと込められた素晴らしいショパンでした。それだけで話しを終えてしまうと、メジューエワの豪快といってもよいほどのダイナミックスと表現の深みから受ける感動が伝わらない。ロシアピアニズムの神髄とも言うべきメジューエワの音の素晴らしさと使用されたNYスタインウェイの素晴らしい音色も強烈な印象として残っています。


5.サッシャ・ゲッツェル/紀尾井ホール室内管のシューマン
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紀尾井ホール室内管弦楽団 第109回定期演奏会
シューマン:交響曲第2番ハ長調ほか
2017年11月25日 四谷 紀尾井ホール
サッシャ・ゲッツェル指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団

どちらかと言えば平穏に進んだ定期演奏会でしたが、最後にとんでもない名演が飛び出しました。まさに「奇跡のようなシューマン」とも言うべき快演。リズムがリズムとぶつかり合い、シンコペーションや変則的なアクセントが責め立てるようにぶつかる複リズム的な衝突にはシューマンの独特の感性があってしばしば逸脱や狂気、凶状さえ感じます。第3楽章の『ピアニッシモの大悲劇』も無上の美。そういう演奏技巧面でも音楽表現面でも極めて難渋・難解な曲を、鋭利で明晰なまでの正確さで弾ききるアンサンブルが冴えに冴えました。これほどの演奏が日本人オケから聴けたというのも感激でした。恐らく世界トップクラスのオーケストラだってこんなリスクの高い曲を引っさげて日本公演をするはずがないでしょう。今年、リニューアルしたばかりの紀尾井ホール室内管弦楽団ですが、早くもとんでもないことをやりました。
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