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2024年04月12日23:39

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フランスからアメリカへ (ヴィルタス・クヮルテット)

今年の東京春祭の東京都美術館でのミュージアムコンサートのテーマは《フランス》。

アメリカ・ボストンのウースター美術館所蔵の「印象派」コレクションの展示に連動したもの。その掉尾を飾る第4回目のコンサートは、ヴィルタス・クァルテットが登場。

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先行したコンサートは皆さんが、文字通りラベルやドビュッシーといった《印象派》を中心にフランスもののプログラムを組んでいましたが、ヴィルタス・クァルテットは、文字通りフランスからアメリカへ。

しかも、ラヴェルの四重奏曲とドヴォルザークの《アメリカ》という弦楽四重奏曲の中でも飛びきりの人気名曲。それを二つ並べるだけ…… 休憩なしの1時間余りのコンサートならではの潔さです。

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ヴィルタス・クァルテットは、初めて聴きますが、メンバーはすご腕の名人たち。特に、私にとっては馬渕昌子さん、丸山泰雄さんは、紀尾井シンフォニエッタ東京の時代からの紀尾井ホール室内管の中心メンバーなので顔なじみ。

仙台生まれの丸山さんがリーダーとなって2008年に結成、いわき市のいわき芸術文化交流館アリオス(いわきアリオス)を拠点として活動しています。いわき市の他、神奈川県相模湖や東京都小金井市などでも定期的に演奏会を開催していて、いわば地域密着型のクァルテット。メンバーそれぞれもそうなのですが、四重奏団ならではの新しい行き方を地道に実践している。

その息の合ったアンサンブルは見事。各人がすご腕なのですが、その陣形は実に堅牢で連携が崩れない。だからこそラヴェルのような様々な音色とリズムが交錯する複雑な曲想であっても破綻なく進捗。なかなかにスリリングでした。

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ちょっと残念だったのが、会場の音響。美術館の講堂なのでデッドな環境はやむを得ないのですが、西洋美術館の講堂に較べるとさらに倍音域が吸われてしまい、ラヴェル独特の彩色のハーモニーがうまく響いてくれません。

二曲目の《アメリカ》が凄かった。

いきなりヴィオラの馬淵さんが五音音階風の土俗的なテーマをかき鳴らす。これが三上さんのヴァイオリンに渡されるとアゴーギグが揺れ出して、鮮烈な郷愁をまとった歌声がクァルテットのあちらこちらから呼応し出す。音型の繰り返しのさざめきもあちらこちらに受け渡されながら、その中で誰かが歌っている。第二ヴァイオリン数馬佳祐さんのウケとツッコミの情感と音の色彩が鮮やか。音符通りよりも、それぞれの歌う心の揺らぎがアンサンブル全体の輻輳した歌となって湧き上がる。第二楽章の丸山さんのチェロの音色も満喫しました。後半は、音楽のグルーブ感が湧き上がるように高まっていく。ホールの音響もここでは気になりません。書法の違いで相性があるのでしょうか。

音が良いという評判の《いわきアリオス》に出かけてみたくなりました。



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東京・春・音楽祭2024
ミュージアム・コンサート
「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展 記念コンサート vol.42024年4月2日(火)14:00
東京・上野 東京都美術館 講堂

ヴィルタス・クヮルテット
 ヴァイオリン:三上 亮、對馬佳祐
 ヴィオラ:馬渕昌子
 チェロ:丸山泰雄

ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 op.96《アメリカ》
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