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2023年02月19日23:16

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戦争、フォーディズム、廃娼運動…

この間に、ともに竹村民郎氏の
1『戦争とフォーディズム 戦間期日本の政治・経済・社会・文化』(藤原書店、2022年6月)と、
2『廃娼運動 廓の女性はどう解放されたか』(中公新書、1982年9月)
――を読んだ。

1はハードカバーで500ページ余り、重さ600グラム弱。多くの読みかけや積ん読の中から、いま最も読了すべき1冊として帰宅後とこの週末に読んだ。著者の竹村氏は1929年生まれだから、この本が出た去年で満93歳だが、学者としてバリバリの健在である。ただ本の「むすび」に多くの医師への謝辞が述べられており、さすがに高齢のため持病もたくさんおありだろう、と推察される。

この本は5部構成で、戦前(世界史的には戦間期)の日本のさまざまな分野についての論文が集成されている。各部で焦点となる中心的人物を拾うと、1「石原莞爾」、2「大河内正敏」、3「永田鉄山と岸信介」、4「吉野信次、岸信介と石橋湛山」となるが、第5部は特定の人物でなく、日露戦争後、特に1920年代の港都大連の発展と、「日本の廃娼運動で植民地大連が果たした役割の重要性」にスポットが当てられる。

著者は大学の教授も務めていたが、Wikipediaにも載っていないから、主流の歴史学会などではあまり評価されていないと思われる。本の題にもなっているフォーディズム(Fordism)は、ヘンリー・フォードが自社の自動車工場で行った生産手法や経営思想のことで、現代の資本主義を特徴付ける概念。「2度の世界大戦を含む20世紀以降の戦争は、フォードなどの自動車を含め資本主義による大量生産なくしてはあり得なかった」とは素人の僕でも納得できることだ。にもかかわらず、歴史研究はなぜかこれをなおざりにしてきたとして、竹村氏は研究に取り組んできた。

上に挙げた人物では、陸軍最高の頭脳・知性の持ち主であったろう永田鉄山や石原莞爾、革新官僚の岸信介を含め、多くの指導的人物がフォーディズムの重要性を理解しておらず、よく理解していたのは岸信介の上司の吉野信次(吉野作造の弟)と日産コンツェルンの創始者・鮎川義介くらいだったと評している。

加えて、「廃娼運動」も日本史の研究上なおざりにされてきたが、著者が力を注いだ分野である。
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