mixiユーザー(id:7131895)

2023年04月21日07:46

123 view

女中と、妾・愛人と(その4)

独身の若い女性が一般家庭に住み込みで働く「女中」(1960年発行の労働省による「女中白書」的な刊行物では「住込家事使用人」)は、若い女性の4大職業の一つだった。だが、高度経済成長期の日本社会の大きな変化に伴い、1970年代にはほぼ消滅していた。

大正期から1967年までの小説を収めた阪本博志編『女中』の番外編的作品が、松任谷由実がまだ荒井由実だった時代の伝記『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』(2022年12月第一刷)だろう。この本は、幼いユーミンが仲の良かった女中さんの実家のある山形に連れていかれて過ごす夏の日々という、読者の意表を突く始まり方をする。東京の八王子で一番大きい呉服店の次女、当時の荒井由実はそれだけ女中っ子だったのだ。

一方、『小説ユーミン』と時代的にほぼ重なる『ザ・タイガース』はメンバーらが「地方都市」京都にいた頃から始まり、東京に出て大人気を博した後に解散するまでが描かれるが、女中のことはほぼ出てこない。メンバーらの周りにいた母親、姉妹、親戚の女性などにとどまる。

――それはともかくタイトルの後半に「妾・愛人」を掲げたのは、女中よりも妾や愛人の方が小説や映画にはるかに多く出てくるのに、「シリーズ 紙礫」にこれをテーマにしたものが出ておらず、気になったからである。今後の刊行予定は承知していないが、いかんせん、まだ出ていない。ネットで調べると石井亜由美『妾と愛人のフェミニズム』(青弓社、2023年3月27日第一刷)という新刊が出ていたので、さっそく取り寄せ、読了した。この意欲的な力作については、追って書きたい。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年04月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

最近の日記