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2021年08月26日00:31

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芦川いづみの2つの顔

今夜観た芦川いづみが出ている映画2本:
1『無法一代』(1957年公開、滝沢英輔監督、モノクロ)
2『あした晴れるか』(1960年公開、中平康監督、カラー)

1『無法一代』は日露戦争の翌年、明治末の京都伏見の遊廓が舞台。貧乏の淵から抜け出て金持ちになるため、主人公の男(三橋達也)は妻(新珠三千代)と女郎屋を営む。女たちを犠牲にしても、自分は成功しようという強い野心を抱いている。実話に基づく原作小説は文字通り一代記なのだろうが、映画はまだこれからという半生期で終わる。その中で芦川いづみは、親の借金のかたで女郎屋に売られた若い娘。客の子を身ごもった果てに、川に身を投げて自殺する。「女優芦川いづみのイメージの極北」のような役柄かもしれない。彼女は数ある日本の女優の中で、「悲しそうな表情」が最も似合う一人かもしれない。少なくとも、日活黄金時代の後輩の大女優、浅丘ルリ子や吉永小百合に比べてはるかにそうだろう。

2『あした晴れるか』は実に対照的。フィルム会社の宣伝企画「東京探検」の写真撮影のために、若手カメラマン(石原裕次郎)のプロデューサー兼ディレクター役を務める女性を演じるのが芦川いづみ。映画を煎じ詰めれば、二人を軸に繰り広げられる「ドタバタ・ロマンチックコメディ」である。この作品では、「コメディエンヌ芦川いづみ」の潜在能力が十分に発揮されている。その際の小道具が黒っぽく分厚い縁の大きな眼鏡。この映画で彼女がダテ眼鏡をはずしているのは、酔っぱらって寝ている10秒間ほどだけである。『結婚相談』や『誘惑』でエロチックで怪しげなエピソードに形象化した監督中平康の芦川いづみへの「屈折した性的嗜虐志向」が、この作品では彼女に全編メガネをかけさせた、という気がする。
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