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2021年08月10日02:37

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『B面昭和史 1926-1945』と国家総動員法

半藤一利さんの文庫版『B面昭和史 1926-1945』を読んだ。参考文献まで含め655ページ。昭和改元から敗戦の1945年まで、2年ごとくらいに一般国民の事件や動向を主眼に丁寧に描く。ベストセラーになった『昭和史 1926-1945』では書けなかったこと、書ききれなった庶民のことを。ただ、扱う時代が時代だけにともすれば戦争と政治(A面的な内容)に傾きがちにはなるが。

これだけのページ数なので興味深いエピソードは枚挙にいとまないが、いま印象に残っているのは、日中戦争初期の昭和12、13(1937〜38)年頃、銃後=国内は意外に好景気で平和だったという指摘。メディア(当時はテレビはなく新聞が主で、他に雑誌とNHKラジオ)、特に「新聞と国民は戦争が好きだ」ということ。「戦争について書けば新聞が売れる」というのは日清、日露戦争からの長期的トレンド。そして、最大の教訓は、「総動員体制」や「総動員法」についての警告。半藤氏によれば、この法律は「われわれの生活のすべてを軍に差し上げますということに近い法律なんですよ」。

巻末に半藤さんと同じ昭和5(1930)年の東京生まれで、戦後に満州から引き揚げた澤地久枝さんとの対談があり、澤地さんは大正9(1920)年、陸軍省発行の国家総動員に関する文書を持参。永田鉄山が書いたとみられるこの文書は、ヨーロッパの第一次大戦を観察、研究した成果で、陸軍は早くから総動員体制について研究していた。総動員法が成立したら、この分野はこうしようと。例を挙げると、動物の革は重要な軍事物資だから、国民には革靴を禁止し、代用に底は木製で上は紙、など。たいていの物資は軍事物資でもあるから、いざとなったら軍は国民からほとんどの物を取り上げる。その「国家総動員法」が成立したのは国内が好景気だった昭和13年。
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