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2021年08月06日01:31

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座り机の吉本隆明

手元の「100分de名著 吉本隆明『共同幻想論』」(先崎彰容)にある、白髪で80歳前後と思われる吉本の写真にハッとした。吉本がブラウン管式のパソコンを置いたデスク前の椅子に座って、椅子を横に向けカメラの方に微笑んでいる。

何も奇異なことはないが、僕が今から40年ほど前に吉本さんに会った時とは違う。吉本は当時まだ50代、バリバリ現役の頃で、千駄木の戸建てに住んでいた。友人と2人で午後7時に伺った(仕事の区切りが付いて時間に余裕ができる日時だった)。2階の仕事部屋に通されると、午前2時まで無名の若い読者2人にビールで、そして出前の餃子を何度か追加注文して歓待してくれた。その間、まるまる7時間、話づめだった。それが何よりの、これ以上はない「もてなし」だった。ーーこれが「戦後最大の思想家」吉本との一期一会である。

写真にハッとしたのは、その時に迎えてもらった6畳の仕事部屋で吉本は「座り机」を背に僕らに対面したから。デスクも、椅子も、パソコンも、恐らく駒込に引っ越した際か、その後に使うようになったのだろう。

つまり、吉本の膨大な著作のうち、『言語にとって美とはなにか』や『共同幻想論』などの代表作はあの、吉本さんが背にした座り机で書かれたのだ。
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