宮本常一はバードからの引用に続いて、アイヌの信仰には各種の自然信仰=アニミズムの中に唯一、源義経を祀った義経神社があることを確認している。宮本によれば、『義経記』が400年ほど前にアイヌの世界に入った。
この本の末尾に付された赤坂憲雄の文によると、近年の考古学や人類学の成果から、アイヌは縄文人の後裔であり、12〜13世紀頃に民族として形成されたことが分かっている。
こうした異世界から新たな神が入ってくることについて、宮本は自身が『広島県史』民俗編を書いた際に気づいたことに触れている。宮本によれば、広島県下全体に最も多いのが「荒神(こうじん)様という、えたいの知れない神様」。
辞書・辞典によると、荒神(こうじん)は「仏・法・僧の3宝を守る神で、修験道や日蓮宗に見られる」。まさに「神仏習合」の結果生まれた神様だ(知らなかった!)。
宮本によれば、広島県の荒神様の実態は多様で、祠があるものもないものもあり、小さな地域にほぼ1つずつ祀られ、祖先神と思われるものもそうでないものもある。県下西部ではこれに代わって「河内神」が多くなり、水のほとりが多いという。全体に自然神的なものが多く、祖先神的なものもある。
こうしたローカルな神様の上に、勧請神が乗っかってくる。春日神社、加茂神社、八幡神社など、より勢力の大きな神社から勧請(分霊)された神が元々の自然神の上に被さる。
――これは広島だけでなく、日本各地で起きてきたことだ。他にも伊勢神宮や八坂神社、鹿嶋神宮等々が全国に勢力を拡大した。
正月の神は季節神=自然神的なもので、新しい神とともに幸せをもたらす。だが正月の神を支配する神として、春日、加茂、八幡などの強い大きな神が小さい神様を統一するようになる。
ここで宮本は、アイヌにおける義経神社(義経信仰)が元々の小さな神々を支配するようになったと指摘し、「国家の起源」!を示唆している。
――う〜ん、なるほど。
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