「国家の独立」からの年月

シンガポールの初代首相リー・クアンユー（１９２３年生まれ）が２３日に死去し、２９日の国葬には世界中の要人が弔問に訪れる。

隣国マレーシアのマハティール元首相（１９２５年生まれ）は、リー元首相を２００８年に死んだインドネシアのスハルト元大統領（１９２１年生まれ）とともにASEANは強力な指導者を失ったとし、「国家独立のために戦い、その価値を知る」指導者の時代が終焉を迎えたとコメントを発した。

シンガポールも含むマレーシアの誕生は１９６３年、マレーシアからのシンガポールの分離・独立は１９６５年だった。

東南アジア諸国のトップだったこれら３人の人物は、世代的に日本ではちょうど「戦中派」と一致する。著作家でいえば、１９２２年生まれの橋川文三、１９２４年生まれの吉本隆明、１９２５年生まれの三島由紀夫など。
――「近代天皇制の下の皇国史観」という日本特殊な要因も含め、国のために死ぬことが至上の価値という、官製イデオロギーを当たり前として受け入れた特異な世代。日本は植民地化されたことはないが、その危機感から徳川幕府が倒された明治維新は１８６８年。

第二次大戦の戦勝国で、戦後のパックスアメリカーナの宗主国アメリカに目を転じると、同世代の代表は１９２２年生まれのジャック・ケルアック、１９２６年生まれのアレン・ギンズバーグ、少しさかのぼって１９１４年生まれのウィリアム・バロウズなど、つまり皆、「スクウェア」な社会に反抗し、麻薬や同性愛を含む放縦に耽ることを唯一の価値として振る舞ったかに見える「ビートジェネレーション」である。
――そのアメリカ合衆国の独立宣言は１７７６年だった。