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2023年01月23日01:24

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満洲、聖と賤、酒場放浪

最近読んだ本:
1『ボクの満州 漫画家たちの敗戦体験』(亜紀書房、第1版第1刷は1995年7月)
2野間宏・沖浦和光『日本の聖と賤 中世篇』(河出文庫、単行本は1985年7月)
3吉田類『酒場放浪記』3〜6

1に登場する10人は全て、旧満州ないし中国からの引揚げ者だった。著者・編者のうち9人は、敗戦時の年齢が2〜10歳。うち赤塚不二夫、古谷三敏、ちばてつや、森田拳次の4人は子供の頃からおなじみの名前である。各漫画家の自筆のイラストはかわいらしいが、厳しい深刻な内容もある。
 各人の子供時代の記憶を通してだが、この本で初めて知る戦時中の事実も少なくなかった。赤塚不二夫の父親も含め、父親の何人かは日本軍が占領ないし実効支配していた中国領土で、憲兵や警察官として中国の人たちを「取り締まっていた」――日本の領土ではなく、相手も中国人なのに!(そういえば、佐藤忠男氏の本で知ったが、笠智衆は若い頃の主演映画で、満州国の日本人警察署長で、匪賊(抗日独立運動家)に襲われて殉職する役だったとか)。
 古谷三敏が最後に移された天津の貨物廠は、北支派遣軍50万人の糧食、衣服など5年分の巨大集積基地だった――軍事史に詳しい人は知っていたろうが、僕は初めて知った。

2は野間・沖浦両氏の対談と出版の時期のせいか、注を付けず全て談話の中で解説しながら議論が展開される。これを解説の塩見鮮一郎氏は「賤民像の百科事典」と呼んでいる。内容は両氏が先駆けだったようだ。戦後長年主流だったマルクス主義を含む戦後民主主義的歴史観では捉えきれていなかった、「日本史における天皇制と被差別民」を偏見にとらわれず捉えていこうとしている。実はこれはシリーズ全4冊の1つなので、今後もフォローしていく。それにしても、もっと早く「沖浦民俗学」を知っておくべきだった。

3の酒場放浪記は「読む」というより、本をバッグに入れ、電話もかけずに載っている店を目指し、迷子になりながらさまよう、今の僕の「マイブーム」の導きの糸。ちなみに、ほぼ同時に、昼休みの散歩も始めた。
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