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2022年09月19日22:02

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満洲、公安警察、松本清張

しばらくこの日記を書かなかったが、以下は読了していた本。

1 船尾修 写真・文『日本人が夢見た満洲という幻影 中国東北部の建築遺稿を訪ねて』(新日本出版社、2022年7月)
2 『池上彰・森達也の これだけは知っておきたいマスコミの大問題』(現代書館、2015年9月)
3 青木理『日本の公安警察』(講談社現代新書、2000年1月)
4 半藤一利 編・解説『なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議』(文春新書、2022年2月)
5 藤井康栄『松本清張の残像』(文春新書、2002年12月)

――以上は全て1週間以上前に読み終えていた。
1 先週、書店でこれ以外にも満洲をめぐる新刊書を見かけた。満洲は、歴史家でなくとも、日本の近代史に興味を持った人間が必ず通る道なのかもしれない。1960年生まれの船尾氏もそんな一人。コロナ禍以前の数年間、ビザなし渡航が可能な2週間を使って、旧満洲こと中国東北部に10回ほど渡航して、主に日本人が建てた建築遺稿を写して回った。中国人は韓国人と違って、日本人やロシア人が建てた構築物でも、「使えるものは使おう」という考えらしい。そうした写真は豊富だが、写真集ではないから、著者なりの歴史叙述がある。

3 『日本の公安警察』は20年以上も前の本だが、大筋の内容は現在もそれほど変わっていないのでは。警察の公安部門は、事件の後に動き出す刑事部門と違って、「公共の安全を守る」ために、国家・社会にとって「危なそうな人物や組織を想定」して、予防的な活動を行っている。だから各界で高い地位にあったり、言動が目立つ人物を常に監視しており、その際に非合法な手段も辞さない(警察自身はもちろん否定するが、これを認定した確定判決もある)。この本より後のことだが、前川喜平・元文部科学事務次官の出会い系パブ通いがメディアにリークされたのもその一端。

4で半藤さんは、戦後の長い間、常識のようになっていた「海軍善玉説」を批判し、陸軍と海軍はどっちもどっち、だという。

5は貴重な松本清張論である。著者の藤井さんは、半藤さんより少し後輩の文芸春秋社の編集者で、半ば偶然的な経緯で松本清張の担当となり、以後30年も担当することになった。前任者が女性で同じ女性の方が良い、となった。当時の清張はまさに売れっ子作家で、既に抱える連載が9本か10本あったが、何とかもう1本をと依頼すると、作家本人は「限界に挑戦」してみることになったが、企画を考えたり取材したりする暇は皆無。そこで大学で日本近代史を専攻した藤井さんが昭和史に限定して企画から取材、資料集めをした上で作家にレクチャー。そこから作家が書き始め、書き上げる――『昭和史発掘』の連載開始時にたまたまそうなったこの方式が、8年後の最後まで続いてしまったのだという。
 この最初のいきさつ以外にも、さまざまな貴重なエピソードや深い洞察が盛り込まれている。

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