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2021年09月18日02:17

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『若い人』:映画と原作

まず表題の日活映画(1962年公開、監督・脚本:西河克己)を観た。ミッション系女子校の男性教師・間崎(まさき:石原裕次郎)と同僚の女性教師・橋本先生(浅丘ルリ子)と「妖しの美少女」(原作での表現による)江波恵子(吉永小百合)の3人が軸となる。原作は1933年8月から1937年12月まで『三田文学』に断続連載されて石坂の出世作となり、1937年、上下巻で改造社から刊行された。
 三浦雅士『石坂洋次郎の逆襲』の後に、原作小説を読んだ。読んだ版は1960年刊の新潮社日本文學全集46『石坂洋次郎集』。

映画は原作とは別物とはいえ、「主要な3人の関係をめぐる出来事」において映画では大きな改変がなされている。間崎と関わるエピソードが十分に展開された後の江波恵子からの求愛にも関わらず、彼は「僕は橋本先生を選ぶ」と言って拒絶する。ーーこの選択は、それまでの概ね原作に基づくストーリー展開からは唐突に思われた。

原作では、間崎が喧嘩に巻き込まれて大けがを負い、風邪も重なって寝込み、看病していた恵子と間崎が結ばれるのだが、「ーー次の夜彼等はお互いの愛情を誓い合った。」の一文でしか表現されていない(もし表現を充実させるなら、そこだけがポルノになってしまう)。またその後で恵子に拒絶された間崎は橋本先生と結ばれる。この小説では互いに好意を抱く若い3人の男女が軸となるのに、人生や社会正義や恋愛や教育をめぐるかなり抽象的で観念的な「議論」が大きな比重を占め、作品のボディを成している。

日活の恋愛映画の多くで、悩んだ挙句に主人公の女性が条件の良くない方の男を選んで純愛を成就するパターンが踏襲され、金持ちで家柄の良い息子の方が最後に拒絶される。ところが、『若い人』では男が2人の魅力ある美女の間で悩み、さまよう。
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