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2021年07月25日16:29

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「過去」への惹かれ方・対し方

加藤九祚(きゅうぞう)『シベリアに憑かれた人々』(岩波新書)を読み終えて、これも「死者が死者を悼む」だと浮かんだ。1974年に出た本だから当然だろう。著者は1922年朝鮮生まれ、1945年満州で終戦を迎え、5年間シベリアに抑留された。この間に「シベリア」への関心が生まれた。
 内容はシベリアの探検・研究に名を残す人々の紹介。その広大な大地は、地理的探検をすべき未踏の秘境と地質、生物、民族・民俗等の知るべき謎の宝庫だった。燃えるような探求心と学問的関心の対象として、ヨーロッパの人々を引き付けてやまなかった。ロシアはもとより、ドイツやスウェーデン、フィンランド、ポーランドなどの探検家や学者たちがその探求を担ってきた。その中には日本人の漂流民・大黒屋光太夫の恩人となったラクスマンも含まれる。
ーー過去のシベリア探検・研究の一端を知った訳だが、それ以外のより新しい膨大なシベリア研究にまで踏み込む気力はない、今のところ。

『砂糖の世界史』の著者・川北稔は、先日読んだミンツ『甘さと権力』のメインの翻訳者。複雑な世界をあえて単純化しないミンツ流の歴史人類学を、ウォーラーステインの「世界システム論」的な世界観によって単純化し(生徒向け岩波ジュニア新書のためもあり)、世界史がスッキリ分かった気になる。
 イギリスでは産業革命以後、最初は東洋の中国から輸入し、やがて植民地インドでとれた紅茶に、西半球のカリブ海植民地のサトウキビ農園で収穫し精製した砂糖を入れて飲むことが当たり前になった。貧しい労働者や農民でさえ、自国ではとれない砂糖と紅茶を食事の必須アイテムにする! 世界は一つになり、イギリスは世界の中心になった。さらに、イギリス人労働者には、温かいというだけで「ホット・ディッシュ」はご馳走なのだという。(日本人のように刺身や鮨を知らなかったことは可哀そうだが、本人たちは思ってもみなかった)

さて、読んだとは言えないのが、新刊の尾脇秀和『氏名の誕生』。この本で詳細に紹介、説明されているのは、現在のような氏名が生まれる前の江戸時代の名前の在り方。現代人の誰もあずかり知らない「異世界」である。著者のように30代でも日本近世史が専門の学者にはなじみがある世界だが、なかなか入っていきずらい。

今の僕にとってなじみのある過去は、最近読んだ中では小泉信三・信吉父子や甘粕正彦、火野葦平など。
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