城南大空襲

今日の東京新聞に、1945年5月24日、東京南西部を焦土と化した「城南大空襲」が取り上げられている。縦横に、数多くの見出しが躍る中に「『東京大空襲』上回る最大規模」とあった。

1945年3月9日夜から10日にかけての東京大空襲は有名で昔から知っていたが、城南大空襲は知らなかった。現在の東京の三大商店街の一つ、よくテレビニュースなどに出る戸越銀座あたりを含む一帯を焼け野原にした。荏原、品川などが標的になり、「Ｂ29来襲520機、焼夷弾3645トン」「死傷者4900人」という見出しもある。東京大空襲を含む「東京五大空襲」の一つとされる。

日本全国で、いや東京だけでも夥しい空襲があったのに、東京大空襲（下町大空襲）だけが有名で歴史に名を遺しているのは皮肉な現実だ。人間の記憶力にはキャパシティーがあって、ネット検索みたいに上位に来ないと何でもあまり問題にされない。

生き残った証言者の一人が毒蝮三太夫（85歳）で9歳の時だった。未明の空襲で焼け出され、逃げ惑ううち靴が焦げ、落ちていた少年用の靴に履き替えようと手に取ると、片方が重い。中に足首が入っていたが、足首を取り出して持ち帰った。母親も何も言わなかったという。

手元の『米軍が記録した日本空襲』の「東京都市部への主要空襲一覧表」にはこの「城南大空襲」が載っていない。奥付のページを見ると、これは2020年刊だが、元は1995年刊の本の「新装版」である。そこで2018年刊のNHKスペシャル『本土空襲 全記録』を開くと「東京五大空襲」に一節が充てられ、「5月24日には、東京への最大規模の爆撃が行われた」とある。

この本の序章では、アメリカ国立公文書館に保管されていた機密文書2万ページを１ページずつスキャンしての精査などにより、本土空襲の回数が約2000回に上ることが明らかになったとされている。東京大空襲はそのうちの一つにすぎない。