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2021年05月15日21:23

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双葉山の連勝と皇軍の快進撃

二子山勝治監修・新潮社編『大相撲の世界』を読んだ。珍しくアマゾンでなく、しばらく前にたまたま町の古本屋で買ったもの。刊行された昭和59(1984)年は、横綱が千代の富士と隆の里で、ハワイ出身の小錦の体重がまだ215キロである。モンゴル勢が入門するはるか以前、44回優勝の横綱白鵬が生まれる前年である。

この本で印象的なことを一つ挙げると、さまざまな相撲雑学的な知識よりも、ある時代を描く「筆致」だった。その箇所を引くと――

<昭和十二年、中国でも戦火があがり、大陸の戦線はドロ沼に足を踏み込むように果てしなく拡大していった。(中略)そのとき、土俵には、双葉山という相撲史上最高の名力士が登場した。そして、皇軍と競うがごとく、皇軍の守護神のごとく、連戦連勝した。双葉山は土俵の英雄のみならず、国民の英雄となっていった。(中略)双葉山が全盛を誇った昭和十年代――このときほど、国民と相撲が融然一体化して燃えた時代はない。>

――この文を書いたのは、その時代を知識として学んだのでなく、生きて皇軍と双葉山とに声援を送った人だろう、と思うのだ。双葉山の連勝が69連勝で止まったのは昭和14年で、本の刊行の45年も前だが、現在に置き換えればある年齢の者にはそれほど昔でもない。カップヌードルの発売と日本マクドナルドの第一号店オープンが1971年で、一般国民になじまれるのはその翌年以降だろう。セブンイレブンの日本一号店が1974年で今から47年前である。それらよりも双葉山の連勝は少し新しい記憶、それも「国民的記憶」なのである。

これを書いたのは、二子山でも新潮社の編集部でもなく、奥付で新潮社に付記された編集プロダクションの誰かに違いない。その誰かの年齢は、双葉山の連勝当時、もの心がつく年齢より上に違いない。
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