皇帝は暗殺される

興亡の世界史『地中海世界とローマ帝国』を読んだ。
　印象を一つだけ挙げれば、ローマ皇帝が暗殺される頻度の高さである。その理由の一つは、ローマは元々は共和政であり、その後に帝政になっても中国のような「王朝」はなかったことだろう。ローマでは、血縁を基軸とする権力の継承が中国や他の古代文明ほど強力には発達しなかった。今の皇帝が、さまざまな要因・理由で「皇帝たるにふさわしくない」と考えられた時、暗殺するか自殺を強いることは、最も多く取られた方策だったように見える。
　皇帝の死因には病気や事故も当然あるとはいえ、戦場で死んだか、側近などに殺された皇帝が多かったように見える。戦場の死でも、戦闘での戦死のほかに、部下の裏切りによる殺害もある。

同じ「帝国」や「皇帝」という用語が使われるので紛らわしいが、中国とローマではその意味するところは異なっている。