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2018年01月26日01:37

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日本の現実としての「福祉の逆説」

25日の朝日・論壇時評で小熊英二が重要な指摘を行っている。
日本で現実に施行されている政策が、あるべき福祉とは逆指向になっているというのだ。

その結果、近年の意識調査で「高福祉高負担」を支持するのは高所得層に多く、低所得層に少なくなっているという。現在の日本の制度の実態は、「金持ちから多く税を取って、貧しい者に移転し福祉を充実させる」ようにはなっていない、と。

孫引きになるが、福祉の専門家・大沢真理によると、
〇日本の税・社会保障制度はOECD諸国の中でも最も累進度が低い。特に、社会保障制度は低所得の人ほど相対的に負担が重い。
〇負担分を除いて、純粋に政府からの所得移転だけを見ても、日本は最上位20%の方が最下位20%よりも多く移転されている。

政治学者の西澤由隆によると、
〇階層別の政治意識調査で、所得が下位の30%の層は、(高福祉高負担でなく)「福祉よりも減税」を求め、そもそも福祉を政党選択の基準としていない。
〇日本の有権者の意識は、経済学者・政治学者が想定する「前提」とは真逆。

また、武川正吾によると、さらに
〇近年は高福祉高負担への支持が減り、低福祉低負担への支持が上昇した。

調査ではなく、雨宮処凛の実感によると、
〇2009年には「年越し派遣村」に支持が集まったが、2012年には生活保護叩きが広がるなど、多くの人が「格差と貧困」に麻痺し、諦め、受け入れていった。

そんな中で小熊は、問題なのは福祉自体でなく、本当に必要な人に恩恵が回っていない現在の日本の「制度」だと指摘している。──政治家や政策立案のプロに、今からでも真剣に取り組んでもらいたいところだ。

なお、末尾近くで引かれている小林美希は、東京23区の私立認可保育所の財務諸表を調べ、
〇「園長、事務長、用務員」の人件費率が異様に高い保育所と、その保育所での活動以外に収入や補助金が転用されている保育所をリスト化。これにより、23区だけで約85億円の公費が「本業」に使われていない!こと等が分かったという。

──この地道な調査報道が明るみに出した事実にはドキッとした。「東京23区の私立認可保育所だけで公費の転用が85億円!」。全国の福祉関係の施設などで同様の「公費=税金の転用」もあるのではないか、と疑ってみたくなる。



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