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2017年03月12日11:50

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高橋睦郎の見た三島由紀夫2

1 高橋睦郎氏は、精神科医でも心理学者でもないが、三島とその晩年6年間を身近で接した実感から、また自身で存在感の希薄さの点で似ているとも考えていることから、三島は終生、肉体的劣等感、存在感の希薄さにさいなまれていたと考えている。ボディビルで筋肉を付け、ボクシング、剣道などの鍛錬を続けた後でも、その肉体は拵えものに見え、痛々しく貧相なものを感じていたという。高橋氏は、自分にそう見えただけでなく、三島自身が存在感の希薄を感じ続けていただろうと考えている。

2 三島は基本的に少年愛者だった一方で、日本では結婚しなければ一人前の小説家と認められないと考えていた。「結婚しないとノーベル賞は貰えない」と言ったこともある。

3 三島の存在感の稀薄とは、「自分が今ここにいるというのは虚妄で、本当はいないのではないかという、冷え冷えとした自らへの疑問」だという。同じ傾向が自分にもあるので、よくわかるという。

4 『憂国』にはその前身として、『ADONIS』の別冊『APOLLO』に榊山保の作者名でと『愛の処刑』という同性愛小説がある(挿絵は三島剛という筆名)。『愛の処刑』は三島由紀夫が書いたことに明白な証拠があり、三島全集の別冊に掲載されている。『ADONIS』や『APOLLO』には、塚本邦雄や中井英夫も別の筆名で書いている。

5 高橋氏によると、三島由紀夫は国体のためでなく、肉体のために死んだ。国体は皇国史観を取ってもわずか二千七百年に対し、肉体は生命発生以来、ひょっとしたらビッグバン以来138億年の歴史を持つ。肉体のために死ぬことは、国体のために死ぬことより、生命体として、人間存在としてはるかに正当──と高橋氏は考える。
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