1.高橋睦郎『在りし、在らまほしかりし三島由紀夫』(平凡社)は、昨年の三島の命日に初版第1刷発行。詩人の高橋氏は1937年12月の生まれでもう79歳になる。1925年1月生まれの三島よりほぼ13歳年下だった。
2.三島を含む日本近代文学の研究者で、解説を担当する井上隆文氏によれば、「三島に関する書物は世に多くあるが、生前の三島と親しく接し、かつ文学の実作者として常に最前線で活躍し続ける書き手による著作は、今まで例がない」。
3.高橋氏自身は「思えば私もこれまで80年近い人生においてさまざまな他者に出会ったが、その中の最も重要な他者は較べる者なくこの人、三島由紀夫だった、と断言できる」としている。それほど、氏にとって三島は重要な存在である。
4.三島にとっても高橋氏は重要な存在の1人だったろうことは、三島が一緒に死んだ森田必勝を高橋氏に会わせていたことからもわかる。特に2人の死の2カ月ほど前に3人だけで会食していた。三島が、森田の存在を、(楯の会の会員など内輪でない)「外の人間に記憶しておいてもらおう」と意図したものと考えられる。
5.三島と高橋氏との付き合いのきっかけは、1964年の年末に三島から勤め先に電話がかかってきたこと。三島が高橋氏の出した詩集を読んで興味を抱いた。三島には、高橋氏のいう「少年愛」があった。高橋氏以前にも、丸山明宏、土方巽、堂本正樹、笈田勝広、黛敏郎、小澤征爾、春日井建、以後にも横尾忠則、篠山紀信、中村哲郎、坂東玉三郎らに関心が向かった。
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