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2015年10月12日19:50

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諭吉vs海舟by安彦良和

『虹色のトロツキー』の作者・安彦良和氏による4巻本コミック『王道の狗(いぬ)』全4巻(中公文庫)を読んだ。

物語は自由民権運動の終息後、日清戦争へと向かう日本と東アジアの歴史の中で、秩父事件や大坂事件で囚われの身となり北海道の監獄を脱獄した2人の若者を軸に展開する。

ストーリーは省くが、作者は日清戦争を「邪悪な戦争」として批判する立場に立つ。明治維新から敗戦に至る近代史を「日清・日露までは良かった」とする、恐らく日本の主流だろう歴史観・世界観とは鋭く対立する。

漫画家だけに登場人物に対する作者の立場は、その描く人物の顔立ちに如実に現れる。日清戦争や朝鮮併合を策謀した陸奥宗光はこの物語で最大の敵役で、その顔はしばしば醜くゆがむ。具体的には、右目がはっきり小さく描かれ、極端に垂れ目になる。

そのタッチは、実は別の人物にも適用される。第3巻で陸奥が登場する少し前、実は福沢諭吉が最初に登場したときも同じで、右目が極端に小さくて垂れ目に描かれているのだ。

主人公が福沢に初めて面会した後、同じ日に勝海舟に会うのだが、海舟は決して醜く描かれていない。写真で見る限り、海舟のほうが福沢よりハンサムではある。その点を差し置いても、両者の顔の描かれ方は2人の思想、特に中国と朝鮮に対する見方に由来している、と言えるだろう。

福沢は(以前の記号化によれば)当初の「アジアの独立」=A1から、「脱亜論」を唱えるようになり、欧米帝国主義=I1に続く「後発帝国主義」=I2に転向していた。それに対し、すでに隠居の身であったとはいえ勝は、日本と朝鮮、中国は争うべきでないと考えていた(=A2)。
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