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2015年02月13日22:49

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『農協との「30年戦争」』

という新書を読了(岡本重明著、文春新書、2010)。

著者は1961年生まれ、愛知県内の普通科高校卒業後、父の急逝で祖父を継いで就農、1993年に農業生産法人・有限会社新鮮組を創業。2001年には農協から脱会し、企業としての農業に取り組んでいる。

この本の内容を一言で言えば、巨大組織・農協の「悪しき官僚制」ぶりであり、著者のその農協との戦いの軌跡である。以下にいくつか引用する。

・(農協組織は)農家の名前をかたり、国に補助金を要求するが、実態は、自らの組織が潤っただけである。

「農協のビジネスはビジネスの非常識」という一節があるが、これは全編にわたって書かれていることである。「良い物を安く消費者に届ける」あるいは「値段は高くても、価格相当に品質の良い物なら買いたい人がいる」などといった、市場ないし一般社会の常識が農協では通じないことの例証に事欠かない。この節から引用すると、

・「国内農産物は安い海外農産物に負ける」とする考え方を捨て去らなければならない。これはあくまで先入観であり、「輸入阻止こそが日本の農業を守る唯一の手段である」と考えている農協の陰謀のようなものだ。農協に頼らなくてもいい競争力の高い農家が増えたら、農協は自分たちの存在意義がなくなるから、この価値観を固定させたいだけだ。

――この本の視野には収められていないが、農協の上には農林水産省の官僚がいる。
一方、著者は、日本の農業をめぐる環境の優れた点として、次のように書いている。

・日本の農地を検討してみれば、そのまま飲めるほどきれいな農業用水、ほとんど停電することのない電気、整備が進んでいる水平な圃場に加え、四季があり、降雨によって自然に大地を浄化できる素晴らしい自然環境がある。
 農業にとって最も大切な、安全な農作物の供給が出来る環境が整っているのだ。農業に適する項目を比較して見れば、日本の圧倒的な優位性が見えてくる。

・補助金に飼いならされた農家は自ら生きていく術さえも見失いつつある。その最大の原因は、農家にも自己責任はあるが、日本独特の「和を尊ぶ精神」を悪用し、農家が自ら考えないように仕向けてきた農業政策の失敗だと思う。自立的な活動をしようとする農家は、ムラからの「脱走」と決めつけ、徹底的にいじめてきた。その主犯格が農協である。…農協はサラリーマンの農協職員や理事が食っていけさえすればよい組織に成り下がり、そのために農民から巧妙に「収奪」する装置でもあった。

――新書のカバーに載った著者の写真。中年のオッサンだが、その面構えがいい。本書の内容である、農協と戦ってきた半生が表れている。


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