引き続き（イスラム国による後藤さん殺害関連のニュースの中でも）、読んだ本から――。
諸星清佳『中国革命の夢が潰えたとき 毛沢東に裏切られた人々』（中公新書、２０００）より：
著者が問題にしているのは、抗日戦争末期の１９４５年から国共内戦を経て、１９４９年１０月１日の中華人民共和国建国の前後までである。著者の言う「裏切り」の相手とは、この時期に毛沢東が、共産党でもその仇敵・国民党でもない、中間派の民主主義諸政党の知識層に対してのものである。
著者によれば、１９７８年の��小平による開放路線は、実はこの４年間に、多元的民主主義として、毛沢東たちが中間派知識層に約束していた「連合政府論」に近づく、いやかなりの程度まで戻る内容だった。中華人民共和国は「連合政権」として歩み始めた。引用ないし抜粋・要約すると――。
・抗日戦争の勝利を日程に収めた中国共産党が、戦後の建国構想を打ち立てるにあたり、１９４５年４月の中国共産党第７回全国大会で、毛沢東主席は「連合政府論」と題する政治報告を行い、戦後の指針を明確にした。…その核心は「連合政権論」だった。…この報告の中で、毛沢東は「最高綱領」と「最低綱領」を提起した。前者は最終目標としての共産主義の実現であるが、後者はまず現実問題としてブルジョワ民主党派と連合する階級融和的な政体である。
・米国大統領特使として訪中するマーシャル宛の周恩来の１９４６年１月３１日付覚書では「中国で創出される民主主義はアメリカ型に従うべきだと我々は信ずる…」とある。
・ところが、内戦の帰趨が決定的になった１９４９年７月、毛沢東は中国共産党２８周年を記念して「人民民主独裁を論ず」を公表。その中で「共産党の指導」「労働者階級の指導」を全面的に打ち出し、４年前の「連合政府論」での中間路線論に引導を渡した。
・１９４５年８月から１９４９年９月までの期間は、国共両党が「和戦両様」の期間。武力ではるかに優った国民党に対し、共産党はその劣勢を政治力で対抗しようとし、民主党派を含む広範な知識人・大衆の支持獲得で対抗した。一方、軍事力を持たず、大衆を一定の勢力に組織できなかった民主諸党派は敗北した。
――中間民主党派を甘言で誘い、後に裏切った点で、毛沢東は、マキアベッリ的な意味で当時の中国政治家の中で「最も政治的に賢かった」ということなのだろう。農民の支持を得て日本軍と最もよく戦ったという点で、中国大衆の支持も得ていた上に。
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