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2024年02月19日01:03

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捨て子は奴隷になった?

この間に読んだ本:順不同
1 森崎和江『からゆきさん』(朝日新聞、昭和56年1月第30刷のハードカバー)
2 『現代思想「総特集 森崎和江」2022年11月臨時増刊号』(青土社)
3 『ヤマの記憶―山本作兵衛 聞き書き―』(西日本新聞社)
4 吉本隆明、三好春樹『<老い>の現在進行形』(春秋社)
5 宮本百合子『フロレンス・ナイチンゲールの生涯』
6 本村凌二『薄闇のローマ世界 嬰児遺棄と奴隷制』(東京大学出版会、1993年8月)

6の著者は、ローマ帝国が専門の西洋史学者。テーマは副題に示されている。ローマ時代のラテン語文献を読んでいるうち、著者は、ローマ時代の人々は、嬰児遺棄(捨て子)と嬰児殺害(乳幼児殺し)を区別せず、遺棄された嬰児はそのまま死んだと考えていたらしい!と気づき、違和感を抱き続けた。日本の歴史には、「間引き」という重大な慣行があったから、いくら嬰児でも、意図的・意識的に殺さない限り、そのまま死ぬとは限らない、「中には善意の人たちに拾われて、無事に育った人もいたのではないか?」と。

この着想を、文献はもとより、歴史人口学・人口動態学の知見や手法を駆使して展開する。ローマ史研究の大きな課題である「奴隷の供給源」について追究するうち、「遺棄された捨て子のかなりの人口が拾われ、奴隷として育てられた」という仮説に到達する。もちろん、「私は捨て子を拾って奴隷として育てた」と明示的に示す文献は(ほぼ)ないし、奴隷の供給源として既知の戦争捕虜や、家庭内の奴隷間の結婚などを全て差し引いても、不明なのが5〜6割残る。――そのうちのかなりは、「遺棄された奴隷が拾われて奴隷になったのではないか?」というのである。

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