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2017年02月25日12:06

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グランシェフの時代

たまたま図書館で見かけた『フランス料理二大巨匠物語 小野正吉と村上信夫』を読んだ。小野は1918年生まれで97年没。村上は1921年生まれの2005年没。2人ともNHKの料理番組で見かけた。小野は痩せて筋張ってやや怖そうな風貌なのに対し、村上は丸々太ってちょび髭を生やし、いつもニコニコしていた。

村上は日本の料理界のトップに君臨した帝国ホテルの、小野は帝国ホテルに追いつき追い越せを目標にしたホテルオークラの総料理長を務めた。

料理人のキャリアは、大きく分けて街のレストランのオーナーシェフになる道と、ホテルの料理長になる道がある。前者が美味い料理を作る職人であれば良いのに対し、後者はホテルの大収益源である宴会部門を大勢の部下を率いて運営するという、前者にはない一大業務も統括する。

村上は40代の若さで料理長になり、テレビに出て帝国ホテルの広告塔の役割を担った。定年後に自分の店を持ち、遠ざかっていた調理現場で自分の美味いと思う料理を作る仕事に戻る準備はしてあったが、社内での根回しをしていなかったので、やむなく役員として止まらざるを得なかった。

この本は基本的に2人のグランシェフを顕彰するものだからやむを得ないかもしれないが、物足りなかったのは、バブル経済崩壊後のホテル業界の危機の中で、帝国ホテルは看板のフランス料理店を閉店、ホテルオークラは規模を3分の1に縮小せざるを得なかった、そのことを責任者でもある彼らがどう捉えていたかを追及していない点である。

料理そのものやレストラン経営を超えた、日本経済そのものも問題としないといけないのだろうが。
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