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2022年12月25日01:36

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鉄道と国家:葛西敬之氏の光と陰

新刊の森功『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(講談社、2022年12月14日)を読んだ。葛西敬之(かさい・よしゆき、1940年10月20日〜2022年5月25日)氏は、今年7月に射殺された安倍晋三元首相に最も近いブレーンで、長期にわたった安倍・菅政権の黒幕的存在だった。例えば、日本の官僚のトップとして政策全体を取り仕切る官房副長官やそれに次ぐ総理大臣秘書官、同補佐官などを送り込んできた張本人。中曽根政権のブレーンとして有名な瀬島龍三にも比せられる。
なふ
(最大公約数的なプロフィールは、「日本の実業家、会社経営者。東海旅客鉄道(JR東海)社長・会長、学校法人海陽学園理事長などを歴任。兵庫県出身の東京都育ち。井手正敬、松田昌士と共に「国鉄改革3人組」と称され、日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化に尽力した。」といったあたりだろう)

著者によると、葛西氏は国鉄、JR東海時代は財界活動などもほとんどしてこなかった。国鉄官僚として、国鉄の「分割民営化」を推進した三本柱の最年少だが、筆頭格だった。分担した仕事が、誰もやりたくない職員課での人員削減と労組対策。その際、少数派だった動労と組んで最大労組の国労を解体に導き、弱小勢力に転落させた。国労は当時、日本最大の労働組合で社会党の最大の支援組織。当時の中曽根首相の国鉄民営化の「表向きの目的」は膨大な累積を解消する経営改革だったが、首相として公言できない大目標は「国労・総評潰し」で、それがまんまと狙い通り実った。
――著者の所氏は、小泉政権の郵政民営化は今の日本に何の影響も与えていないが、中曽根の国鉄分割民営化は日本を大きく変えたと評する。少なくとも、労組と左派勢力が衰退した。

著者によれば、葛西氏はJR東海社長を経て、同会長になってから自社以外の政官財にわたる人脈づくり・拡大と、政権への影響力行使に熱心に取り組むようになる。首相官邸に送り込んだ官房副長官などは、国鉄・JR時代に顧問として雇ったり付き合いのあった警察や経産省の役人だった人物。

さて、葛西氏が亡くなった今、同氏が成し遂げた仕事、および志半ばだった仕事(主にリニアモーターカーによる中央新幹線)を一瞥すると、功罪ないし光と陰が相半ばするように見える。分割民営化によってJR本州3社などは健全経営で上場も果たした。一方で、北海道や四国は、国鉄の分割民営化によって過疎化と大都市圏との格差拡大を促進された。このことは、分割民営化の前から予想できたことである。日本全体の繁栄を図るべき国家の政策としては失敗だろう。

国労・総評潰しも、インフラ企業のストがなくなったのは一般国民には都合が良い反面、30年間も続いてきた経済停滞の一因でもあるだろう。
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