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2022年08月23日01:35

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満洲国と、天皇と(前編)

1 平山周吉『満洲国グランドホテル』と
2 森達也『千代田区一番一号のラビリンス』
――をこの間に読了。ともに今年の新刊。新聞の書評で知り、気になって取り寄せ、しばらく積読した後、最優先に浮上したものから読んだ。

直近の週末に読んだのが『満洲国グランドホテル』。週末のうちに読了したかったのを何とか達成。人名索引まで入れて565ページ。全36章の各章で満洲国(1932〜1945年)に関わりのある人物を一人(以上)取り上げ、各章が満洲国をめぐるそれぞれの評伝のようになっている。こうしたアプローチ、形式が「グランドホテル」スタイルである。(ちなみに、かつて満鉄が沿線で展開していたホテルチェーンは「ヤマトホテル」)

これまでは満州国を語る上で中心的に語られてきた人物群(関東軍幹部や、日本からの高級官僚、満鉄上層部などからなる「二キ三スケ」=東條英機・星野直樹・松岡洋右・岸信介・鮎川義介や、大杉栄殺害で悪名高い甘粕正彦など)は、各章の主要人物との関連で登場するのみ。むしろ文学者の小林秀雄が冒頭を、島木健作が末尾を飾る。俳優では満洲国を代表するスター・李香蘭(山口淑子)が中心の章はなく、代わりに笠智衆、原節子、木暮実千代の章がある。この本は、今まで満洲国の物語で脇役だった人たちを総ざらいしている観もある。歴史叙述にはこんなスタイルもあるのだ。あるいは、歴史学者ではなく「雑文家」を自称する著者が、読んで面白かった昭和史や昭和文学史の登場人物たちのうち、「満洲篇」がこの本なのかもしれない。

ところで、満洲国には国籍法がなかったから、正式な満洲国民は存在しなかった訳である。日本とはパスポートなしで渡航でき、日本からの移住民の多くは日本国籍のままでいたかったし、現実にそうだった。――こんな怪しげなものは国家なのか? ただ「国籍」なるものは、ヨーロッパ近代の国民国家の誕生によって、ようやく生まれたものという。

――こんなことを考えながら、満洲国についての定本的な新書を発注した(書名をよく見るので持っているような気がしたが、見当たらないので)。




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