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2017年05月11日04:05

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「地球に爪痕を残したい」

4月に86歳で死去した詩人で批評家の大岡信が授業中に発した言葉で印象に残っているのが、(もう何か願望があるとすれば)「この地球に爪痕を残したい」ということぐらいだ、という半ば自分自身に対するつぶやきである。今から30年以上も前のことである。

僕が30年前の1987年に米ニューヨークへ移住するより前、明治大学の大学院に在籍していた頃のこと。大岡さんはその頃50代で、外見的には若々しいが、既に多くの詩や批評の著作を上梓していた。さらに詩壇や出版界、現代美術といういわば「ローカル」な専門家とその周辺からなる狭い世界だけでなく、朝日新聞の1面に毎日掲載される連載コラム「折々のうた」を書き続けて既に数年が経っていた。紛れもない「全国区」の有名人であり、文化人だった。詩業の一部が翻訳され、海外の詩人や芸術家とも交流があり、日本の連句や連歌にならった連詩「Limked Poem」を実践していた。自分の好きな詩や文章を書くという分野で、既に十二分にやれることをやり尽くしていた。

もちろん大岡氏は、その後も同じ活動を継続していくことになる。いったん明治大学を辞職したが、1年を措いて東京芸術大学で教鞭を取った。その後、予想通り文化功労者となり、文化勲章を受賞した。

ちなみに僕は、1年間だけ文芸評論家・山本健吉の授業も聴いた。同氏も明治大学を退職して数年後に文化勲章を受章した。


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