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2014年12月23日22:48

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ソフィーの選択

メリル・ストリープがアカデミー主演女優賞を受賞した同名の映画は見ていないまま、何となく気になっていた。その映画の原作の日本語訳の半分、つまり文庫本で二分冊の上巻を読み終えた。

第二次世界大戦終結から2年後の1947年。アメリカ南部出身で大学を出てすぐニューヨークに住み始めた作家志望の主人公の青年が出会うのが、同じアパートに住む金髪のポーランド人美女ソフィーと、その恋人のユダヤ人ネイサンなどの人々。ソフィーの話す少しブロークンな英語の中に、混じってくるのが、ポーランド語、ドイツ語、イディッシュ語、フランス語など…。

そして、登場人物たちの話す言葉と世界観の中に、さまざまな偏見や差別意識が織り込まれる。北部人の南部人に対する、白人の黒人に対する、非ユダヤ人(ほぼキリスト教徒)のユダヤ人に対する、ドイツ人のポーランド人やスラブ人に対する、差別や偏見…。

――作者や主人公にとってだけでなく、アメリカ人なら、少なくともアメリカのインテリ、特に東部のインテリには、気にしないではいられないテーマ群である。

この物語では文庫上巻の終わりに近づくにつれ、ようやく、本題と思われる内容が語られ始める。ソフィーが母国ポーランドにいた戦争中、彼女は、非ユダヤ人とはいえアウシュヴィッツ強制収容所に収容されたが、ドイツ語にも堪能で速記の心得もあったことから、ナチス幹部の一人ルドルフ・ヘスの秘書を務めたこと。また、法学教授だった彼女の父は、反ユダヤ主義の論客だったが、結果的には、それにもかかわらず、処刑されて死んだこと、など。

20世紀にヨーロッパからアメリカに移民ないし亡命した人々は、自分自身の問題として、大なり小なり、誰しもそうした人種や民族の問題を抱え、負の世界史を引きずり、背負っている。
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