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2022年09月05日00:25

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満洲と、ソ連・ロシアと

最近読んだ本。

1 山室信一『キメラ―満洲国の肖像』(中公新書、1993年刊)
2 内村剛介『スターリン獄の日本人 生き急ぐ』(中公文庫、1985年刊。原題は『生き急ぐ――スターリン獄の日本人』三省堂、1967年刊)
3 内村剛介『見るべきほどのものは見つ』(恵雅堂、2002年刊)

1 著者は満洲国(1932年3月〜1945年8月)を、頭が獅子、胴が羊、尾が龍というギリシャ神話の怪物キメラに例える。ここで獅子は関東軍、羊は天皇制国家、尾は中国皇帝および近代中国である。「傀儡国家」満洲国の建国から滅亡までの13年間全体の叙述において、この着想は有効と思われる。満洲国については汗牛充棟であり、さらに膨張しつつあるが、緒方貞子『満州事変』などとともに必読書だろう。2と3の内村剛介も、(当時の)若手による注目すべき満洲研究書としている。

2と3 内村氏の本はかつて持っていたが、読みかじっただけで積読になり、まともに読まないままやがて処分していた。今回は先に読んだ『満洲国グランドホテル』で1章が内村氏に充てられていて、読む気になった。内村氏は第二次世界大戦で旧ソ連の捕虜となりシベリアなどに抑留された日本人約57万5000人の、また1956年の最後の大量集団帰国者11万人の1人。栃木県の出身だが、十代で満洲に渡り、日本のロシア・ソ連研究とその教育の最前線にあったハルビン学院で学んだ。同学院はソ連によってスパイ学校と見なされたために、卒業生の大半は民間に就職していたにもかかわらず、4人に1人が捕虜になったという。
 内村氏はロシア語が優秀だったためか、一般の戦争捕虜向けのラーゲリでなく、戦犯として25年の刑を受け、独房に移された約500人のうちの1人となる。これこそ「スターリン獄」である。その限界状況でたった一人で闘うのだ。対する敵は、毎日接する看守よりも、25年の刑が決められるまでの経緯やシステム、さらにスターリンを頂点とするソビエト国家全体にまで広がり、レーニンにまでさかのぼって批判する決意を抱き、日本に帰国した後もそれを貫く。

――まだ読み始めたばかりの『わが身を吹き抜けたロシア革命』で、内村剛介はロシア革命以来の歴史を「レーニン・スターリンの反革命」と罵倒している。





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