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2021年09月07日09:14

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「半藤史観」にどう対するか(5):番外編「樋口健二の自伝」

樋口健二『慟哭の日本戦後史 ある報道写真家の六十年』を読んだ。「売れない写真家」を自称する1937年生まれの報道写真家・樋口健二氏の自伝。同氏のことは寡聞にして知らなかったこの身だが、新聞の書評欄で知ったこの本、読んでよかった! 

樋口氏は長野県の農家の出身だが、東京に出て働いていた20代の半ばで写真家ロバート・キャパの作品と出会い、自らも報道写真家を志して写真学校に通い、フリーの写真家となった。フリーの報道写真家というのは、広告主の大企業のギャラも、大手メディアの身分保障も無縁ということである。その中で「四日市公害」「原発被曝労働」「瀬戸内海の毒ガス島」や、全国各地の公害・環境破壊の実態を徹底した取材と写真によって暴き、告発してきた人生。東日本大震災に伴う福島第一原発事故は、その樋口氏が74歳の年に起きた。
 同氏は「政・官・財・学・司法・メディア」の嘘と無知を暴き、告発し続け、日本よりも海外で評価が高い。この書は、日本の経済発展の陰に隠れた被害者たちと、損なわれた美しい自然への「慟哭」の戦後史だが、「憤怒」の書でもある。

ーー半藤一利さんの日本近代史、昭和史では大きな焦点を当てられなかった、日本の現実の暗部にこだわってきた人である。
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