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2023年03月01日04:12

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「カーニバル戦争」としてのアジア太平洋戦争4(最後)

『日本のカーニバル戦争』の著者ウチヤマ氏によれば、このカーニバルで最強にして最後の王は「少年航空兵」である。
<少年航空兵がマスメディアにデビューしたのは1940年、銃後が中国での地上戦から、太平洋戦域での対米航空戦の可能性へと関心を移しはじめたころだった。華々しい操縦兵募集ポスターや、国の後援する航空機関連の催し、航空映画、航空ファン雑誌を通じて、少年航空兵は、消費者としての、また臣民としての何百万人もの日本人の欲求と称賛の的になった。
(中略)
航空サブカルチャーのなかで、日本の多くの少年たちは、戦時下ならではのふたつの特徴的な生き方――国のために栄誉ある軍人として身を捧げることと、国境を超えた消費者でありファンであること――を選択していた。>

2つの生き方のうち前者は周知だが、一般にはあまり知られていない後者、「航空ファンの少年像」を喚起し、想起させる資料として、戦時下の日本で最も人気の高かった誠文堂新光社発行のファン雑誌『航空少年』から、種々の記事や読者の投稿が引用されている。さまざまな関心や嗜好(航空機設計技術や模型、機体やパイロット服のデザイン、外国文化など)の航空マニア・オタク向けの雑誌だったのが、対米戦争の戦局悪化とともに、「少年特攻隊員」の募集・応募の色合いが深まっていく。

――著者が挙げる戦時下の「5人の王」が体現するカーニバル(と著者が呼ぶもの)は、「いくら政府が総力戦体制を目指そうとも、国民を完全に統制することはできない」という、考えてみれば当たり前な事実に、著者が正面から向き合い、追究、分析したことで白日の下にさらされた。それは、意識と肉体、脳と身体の関係に例えられるかもしれない。その作業に当たっては、著者自身が述べているように、当時の一人一人の日本人の中に「臣民」と「消費者」が同居していたことを感じ取る能力が欠かせない。

また、この本の英語、アルファベットで書かれた全ての引用文や言及された箇所の日本語原典を完全に突き止め、復元した翻訳者・布施由紀子氏の努力と執念にも敬意を表したい。
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