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2023年01月02日13:57

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サバイバル登山と、重信房子と

年末年始に読んだ順に、
1 服部文祥『増補 サバイバル――人はズルなしで生きられるのか』(ちくま文庫、2016年7月)
2 重信房子『革命の季節 パレスチナの戦場から』(幻冬舎、2012年12月第1刷、2022年5月30日第3刷)
3 重信房子『りんごの木の下であなたを産もうと決めた』(幻冬舎、2001年4月)

1の服部文祥氏は1969年生まれの「サバイバル登山家」。著者が提唱する「サバイバル登山」とは、最新の近代文明の産物である装備や食料を可能な限り持たず、都市や観光スポットや人を避け、最小限度の装備と食料(地図とコンパス、予定日数分の玄米と若干の調味料が主)くらいで、イワナを釣り、野草を採り、野宿しながら尾根や沢を渡って帰ってくること。かつては標高がエベレストに次ぐK2やヨーロッパアルプスに登ったが、現代の登山のあまりの人為性に嫌気がさし、この日本でサバイバル登山を行うようになった。
 生来のインドア派である僕には、探検家・角幡唯介氏の『極夜行』での日の昇らない真冬の北極圏単独行と同様に、この本は極限的状況の文字上での代理体験であり、かつ、著者の文明哲学・人間観・世界観から刺激を受け、自らの日常を思い知る経験だった。

2と3の著者・重信房子(1945年9月28日〜)への関心は、僕の場合は少数派だろう。『文藝春秋 2022年8月特別号』での田原牧『「私党」重信房子と日本赤軍』に説得力があると思っていたから。田原氏いわく、リッダ闘争(日本の政府とマスコミはテルアビブ空港乱射事件とも)実行者のリーダー格・奥平剛士とはパスポート偽造のための偽装結婚にすぎず、思想も行動も関係が薄く、事件直後、婚姻関係やレバノンのべイルートでは有名だったことから、アラブ人の間で「英雄の未亡人」に祭り上げられ、本人もアラブの元首級とも会える要人待遇を受け入れて生きてきたが、事件後に重信が称した「日本赤軍(最初はアラブ赤軍)」には同志らと共有し、引き継いだ思想的基盤はなかった。
 それは生来の「人たらし」だった重信個人の「私党」にすぎず、同志らとの関係は「司令官と兵士ら」であり、自ら敵としてきた体制側、そして左翼勢力の中で権力志向が強いレーニン主義者、スターリン主義者と同じことをしていた。司令官である自分だけが例外的特権を有し、子どものいた女性同志らが大切にしてきた子どもの写真は全て廃棄させたのに、自分の娘の写真だけは大切に保管していた、等々。

――重信が書いた2にも3にも、そんなことは一言も書かれていなかった。そして彼女の支持者たちも「そんなことは知りたくもない」(Facebookで彼女について投稿していた人の反応)。彼女を「聖女に」祭り上げている有力な一人は、版元である幻冬舎の社長・見城徹氏だろう。
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