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2017年03月12日14:57

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高橋睦郎の見た三島由紀夫4

以上は、高橋氏の見た「在りし三島由紀夫」。
以下は、実際にはなかった「在らまほしかりし三島由紀夫」。

1 肉体的劣等感、存在感の稀薄を肯定することによって力とする、見て語ることに徹する存在。三島が嫌った、作中人物でいえば『禁色』の檜俊輔や『豊饒の海』の本多繁邦や、『三熊野詣』の折口信夫をモデルにした「化け先」とあだ名される老教授に近い存在である。

2 高橋氏は、三島は結婚するべきではなかったと思う。最晩年の三島は夫人を極端に怖れ、怖れることに疲れ果てていたが、これは自らまいた種。

3 三島の没後、夫人は数々の醜聞を封印して平岡家の名誉を守り、三島文学を管理する非の打ちどころのない墓守を全うし、50代の若さで亡くなった。夫人こそは、三島の不自然な生き方に巻き込まれた最も深刻な犠牲者だったと改めて同情に堪えないと、高橋氏は思う。

4 さらには、国体のため、天皇のためというフィクショナルな設定に、若者たち、ことに森田必勝のような無染の魂を巻き込むべきではなかった。三島は自分の個人的な存在感の超克、死の成就のために、若者を殉死させるべきではなかった。三島の場合とは逆に、ソクラテスは自分が若者たちのために殉死した。

5 しかし、最大の犠牲者は、人間誰もが持っている原虚無の最も先鋭な感受性として生まれた三島その人かもしれない。

──うーん。「人間誰もが持っている原虚無」というフレーズにびくっとした。
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