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2023年02月13日20:40

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短歌人 2月号 掲載歌

あれこれと追われていて、まあ、怠けている部分も多分にあるのですが。
2月号の歌を載せます。

      七輪に餅を

  正月三日会社にわれを連れゆきて七輪に餅を焼きくれし父

  原つぱは衣笠球場父の膝に寄りてつくづく草野球見き

  麻雀よりかへらぬ父よ 縁側を力のかぎり磨く母知るや

  井戸の中に下りゆく父のおそろしく 井戸浚への声くぐもり聞こゆ

     戦後出版された戦記本
  『伊21潜奮戦記』には身を呈す父のをりしが一事も聞かず

  十歳の秋なり病間(びやうま)のがらんだうどこを探せど父はをらざり

  この本もえうなしと放るダンボール箱 作家渾身の一冊ならむや

なんとなく懐かしい気分になって父の歌を詠みました。
父は戦後トヨタ自動車の子会社に入りました。正月に私を連れて行って餅を焼いてくれたりしました。がらんとした大きな工場の印象があります。
私が10歳の時一年病んで亡くなってしまいました。
海軍の軍人だったので、沢山の写真、日記、本、刀、帽子などがありました、あれはどこへ行ってしまったのでしょう。
戦後出版された戦記本は兄が海軍の同期会に呼ばれてそこで「お父さんの事が書いてあるよ」と頂いてきたものです。
潜水艦が被弾して水がどんどん侵入してくるとき、父が素潜りで修理に向かった、その働きがなかったらどうなっていたか分からない、と話しを聞いてきた、と言っていました。
兄が亡くなる少し前にその本と「恩賜の時計」これだけはなど私に送ってきたものです。
歌は全く子供の目です。

ダンボール箱に本を放る歌ですが、この本ではありません、全く別の話しです。
私がいらな〜い、と放る本も書いた人にとっては渾身の一冊かもしれない、という歌です。

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