今回の講義は自歌自注
『サーベルと燕』小池光歌集
四十歳になりたるわが娘と凧揚げす元日の空に凧あがりたり
巻頭歌、勢いの良いのが巻頭に。
私が30歳の時の娘が40ですよ!
たこあげするか? する! というので。
わたしはやらないで娘が懸命に走って凧揚げをする。
日本語があやふやになるときありて講演途中にしばしば黙す
以前はこわくて黙れない、何としてもしゃべったが出来るようになった。
小林秀雄の講演録を聞いていると10秒ぐらい黙る、わっと話し出す。間だね。
渋谷川を流れてゆきし卵の殻いかになりしかとおもふときあり
「家出てわれは来しとき渋谷川に卵のからがながれ居にけり 斎藤茂吉」
茂吉の歌を元にしているが、元歌は書かない。巨大な運命を感じる
なかにし礼書く歌謡詩にすごみあり「蚊帳の中から花を見る」とぞ
「咲いて儚い酔芙蓉」石川さゆり と小池さん歌う。
わが子らは学校教師にならざりきお父さんはどこかかはいさうにて
わたしの娘は教師にはならなかった。教師一家っているね。
子供ながら言い得ている。
(読み易い歌集だなあ、と一人で読んでいる時は通り過ぎてしまう歌に、小池さんの解説がつくと俄かに歌が生き生きとして来る。面白く。)
題詠 近づく
同窓会に華やぎゆけば華やげる老婆幾人(いくたり)われに近づく とうこ
小池・とてもいい(どこがいいかといえば)自分の事を老婆という。
平然と根性ある。華やぎの重なりもテクニックあり。
(其処でしたね。老人(おいびと)とすれば上品になるけれどまあ、いいかと出しました。自分は老婆と思っていなくて、鏡のように対面するのでした!)
題詠葉書にはもう一首書きました。小池さんの歌集の歌で、それが取り上げられた時は、
どうしよう。歌を4首ばかり覚えていきました。(暗記できます)するとそれは小池さんの挙げてきた歌と一首もかすりませんでした。
サーベルと燕 小池光
山羊の乳飲んで育ちしわれなれば山羊を母よとおもふことあり
十七歳できのふありしが七十歳でけふはありつつ金柑甘し
ひまはりはしづかに首をめぐらせぬ おい、ひまはりと呼びかけられて
二段ベッドの上と下なる思春期や一匹の猫をかはいがりつつ
とうこ選でした。4首目のところで男の子兄弟がわが家とダブってああ…と!
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