メル・ギブソンとショーン・ペン共演という豪華な歴史劇『博士と狂人』を見て来ました。
ショーン・ペンに、このタイプの役が似合うのは想定通りでしたが、鑑賞前は言語学者役のメル・ギブソンに懐疑的でした。しかしこれは、メル・ギブソンのための映画でした。
【物語】
19世紀後半、ビクトリア王朝下の英国。
原語学者のマレー(メル・ギブソン)は、オックスフォード大学が編纂する「英語大辞典」の責任者に抜擢される。膨大な作業に忙殺されるマレーは、広く一般市民からも単語と引用例を募ることにするが、ひとりで1,000語もの引用例を送ってきたある協力者に気が付く。
その協力者とは、アメリカ人外科医のマイナー博士(ショーン・ペン)であり、彼は殺人罪で服役中の身であった。
…日本でも、辞書編纂を描いた名作に『舟を編む』がありました。ある程度のテクノロジーや外部記憶装置がある近代ならまだしも、150年近く前の英国で、しかも数十年にも及ぶ膨大な編集作業をすべて人の手だけで行う、その凄さが描かれます。
ショーン・ペン演じるアメリカ人博士は精神を病んだ殺人犯で、しかも自分が誤って殺した被害者の妻や家族の存在が重くのしかかり、時には癒され、時には追い詰められる、複雑なキャラクターです。ショーン・ペンには適役でした。
一方、辞書編纂の責任者となるマレー=メル・ギブソンは対照的で、家族を愛する言語学者。その眼差し、皺のひとつには深い叡智が刻み込まれ、演技だけではない、メル・ギブソンが持てる力の総てを出し切ったように見えて、惹きつけられます。
原題は邦題通りの"THE PROFESSOR AND THE MADMAN"。一見すると、メル・ギブソンが博士でショーン・ペンが狂人のようですが、どちらにも当てはまる解釈ができるのがポイントでした。出版までに数十年もかかる辞書作りとは、狂気のようなものなのでしょう。★★★。
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