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2019年12月03日21:02

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book『画家たちの戦責任』(北村小夜)半藤利一)

北村小夜著『画家たちの戦責任/藤田嗣治の「アッツ島玉砕」をとおして考える』(梨の木舎)を読んだ。北村小夜さんとは裁判の傍聴とか集会でご一緒したことがある教員の大先輩である。その北村さんがなぜ画家たちの戦争責任を問う本を出されたのかと思いながら読んだ。読み始めてすぐに得心した。1925年、治安維持法成立の年に生まれ北村さんは、旗(日の丸)と歌(君が代)に唆されて軍国少女に育った。その北村さんは高等女学校4年生の時に美術の教師に呼びとめられ、「鬼畜米英」のポスターを描くように言われ、画用紙を渡され、ポスターを書いた原体験があった。(以下、引用する。)
「画用紙の上半分にアメリカ大統領ルーズベルトとイギリスの首相チャーチルの笑顔を大きく描き、体を小さくして中央に描いた肉挽き器に入れ、ハンドルを回すと下から血肉がしたたり落ちるところを描いた。ワットマン紙は赤い絵具の吸い取りもよく心地よかった。その画面上に黒字で大きく「鬼畜米英」と書いて仕上げた。米英は鬼畜であり敵である。敵は殺さなければならない。この殺し方こそ「米英撲滅」にふさわしいと思ったのだ。(中略)そんな軍国少女に育てたものは教育であり、歌であり、絵(戦争画)であった。私の中にはその集大成として藤田嗣治の「アッツ島玉砕」がある。当時の人々に与えた影響を検証しておかなければならない。」(「はじめに」)
北村さんは戦時体制に協力し、戦争画を描いた画家たちがどのような戦争画を描いたのかを調べ上げ、その戦争責任にこだわり、追求して本にまとめられあげられた。そしてその典型として藤田嗣治の戦争画の内容、その戦争プロパガンダに果たした役割を告発される。「この本には、私を軍国少女にした教育・情報と、なかでも重要な役割を果たした戦争画とその今日の在りようを述べ、再び同じ状況にあることを憂うる立場から、今日の教育状況にも触れた。」(「あとがき」)今94歳になられる北村さんが戦争画に関わる原体験にこだわり、一書を完成させられたことに強い感動を覚えた。
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