野本一平著『宮城与徳/移民青年画家の光と影』(沖縄タイムス社)を読んだ。この本は私がスペイン語を習っているアジア図書館で借りたものだ。この本は戦前のスパイ事件であるゾルゲ事件に関与した沖縄出身の青年画家・宮城与徳の生涯を描いた正伝である。沖縄は明治の琉球処分で日本に統合されて以降貧困と差別を受けて来た。宮城与徳も父、兄とともに青年時代にアメリカのカリフォルニアに移民し、青年期を生きた。その宮城の沖縄系移民社会での社会運動、文化芸術運動、社会主義運動への参加と画家としての自己形成過程を描き、ゾルゲ事件に加わるまでの宮城の光の部分を実に魅力的に描く。そこから国際的社会主義運動、ゾルゲ事件に関わるまでの必然を多くの資料を掘り起こして明らかにする。私は昔からゾルゲ事件について興味があり、色々と本を読んできたが、宮崎与徳についてきっちり書かれた本は始めてだった。著者はアメリカ在住で自身の移民経験と重ねて宮城を理解しようとする基調音が全体に感じられる所がこの本の魅力だ。同書は府県立の図書館にはあるようだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する